大阪大学,科学技術振興機構(JST)

令和4年7月1日

大阪大学
科学技術振興機構(JST)

オートファジー分解経路を制御する新たな因子を発見

~栄養状態や分解物により選択、神経変性疾患医療への応用に期待~

ポイント

大阪大学 大学院生命機能研究科の大学院生の大江 由佳子 さん(博士後期課程、研究当時)、大学院医学系研究科の中村 修平 准教授(遺伝学/大学院生命機能研究科 細胞内膜動態研究室/高等共創研究院)、吉森 保 教授(遺伝学/大学院生命機能研究科 細胞内膜動態研究室)らの研究グループは、オートファジーの過程でできる中間体「アンフィソーム」とリソソームの融合を制御する新たなメカニズムを明らかにしました。

オートファジーが誘導されると細胞質成分(分解基質)がオートファゴソームにより隔離・輸送され、分解器官であるリソソームと融合することで内容物が分解されます。これまでこの過程には、オートファゴソームがリソソームと直接融合する経路と、アンフィソームと呼ばれる中間体を経たのちリソソームへ融合する2経路あることが知られていましたが、これらの経路を特異的に制御する因子や、2経路が存在する意義については分かっていませんでした。

今回、研究グループは、これまで全く不明であったアンフィソーム・リソソーム融合を制御する新規因子としてPACSIN1を同定しました。PACSINファミリーたんぱく質は細胞内のさまざまな膜動態に関与することが知られていますが、オートファジーとの関連は分かっていませんでした。PACSINファミリーたんぱく質の網羅的解析から、PACSIN1がアンフィソーム・リソソーム融合を促進することにより、恒常的に機能する基底オートファジーや特定の分解基質を特異的に認識し除去する選択的オートファジーの一部を制御していることを明らかにしました。

さらに、線虫や哺乳類培養細胞を用いた実験からPACSIN1がパーキンソン病など神経変性疾患の発症の原因となる異常たんぱく質(α-シヌクレイン)凝集体の蓄積を防いでいることが分かりました。これにより、オートファジーの分子機構の理解とともに神経変性疾患の発症の予防に新たな知見をもたらすことが期待されます。

本研究成果は、米国科学誌「PLOS Genetics」に、2022年7月1日(金)(日本時間)に公開されます。

本研究は、科学技術振興機構(JST) 戦略的創造研究推進事業 CREST研究領域「細胞外微粒子に起因する生命現象の解明とその制御に向けた基盤技術の創出」における研究課題「オートファジーによる細胞外微粒子応答と形成」(研究代表者:吉森 保)「JPMJCR17H6」、文部科学省 学術変革領域研究B「TFEB依存的・非依存的ポストリソソームシグナルによる個体および生殖寿命制御機構」(研究代表者:中村 修平)「21H05145」、日本学術振興会 基盤研究B「LC3による非オートファジー機能を介した損傷リソソーム修復機構の解明」(研究代表者:中村 修平)「21H02428」のサポートを受けて実施されました。

<プレスリリース資料>

<論文タイトル>

“PACSIN1 is indispensable for amphisome-lysosome fusion during basal autophagy and subsets of selective autophagy”
DOI:10.1371/journal.pgen.1010264

<お問い合わせ先>

(英文)“PACSIN1 is indispensable for amphisome-lysosome fusion during basal autophagy and subsets of selective autophagy

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