ポイント
- 電子回路を使わず、シリコン光集積回路のみで作動する演算方式を考案し、その動作を確認
- 光伝搬だけで演算できるため、超低遅延、かつ消費電力の少ない演算が可能
- デジタル電子回路を補完する高速で低消費電力なAIアクセラレーターへの適用に目途
産業技術総合研究所 プラットフォームフォトニクス研究センターのコン グアンウエイ 主任研究員らは日本電信電話株式会社と共同で、科学技術振興機構の支援のもと、電子回路ではなく、シリコン光集積回路を使った超低遅延かつ消費電力の少ないニューラルネットワーク演算技術を開発した。
この技術は、光集積回路を用いて機械学習の演算を行う技術である。解析すべき多次元データの電気信号は光集積回路のそれぞれ異なる入力ポートに入力されて光信号に変換され、さらに光集積回路に組み込まれた多数の光干渉計を通過する際に演算が行われる。そして、複数の出力ポートの光強度分布として演算結果が出力される。
この技術を用いることにより、電気回路を経ることなく、光集積回路のみによるニューラルネットワーク演算が実現した。このニューラルネットワーク演算では、パラメーターが固定された光集積回路に光を伝搬させるだけで演算が完了するため、デジタル電子回路のような逐次スイッチングが不要となり、電子回路の千分の1以下の遅延時間、かつ数十分の1の消費電力での演算が可能となる。また、光回路では電子回路の10倍以上の高速なクロックが適用できるため、単位時間あたりのデータ処理量も大きくできる。これらの特徴により、この技術はデジタル電子回路を補完するAIアクセラレーターへの応用が期待される。
なお、この技術の詳細は2022年6月30日(現地時間)にSpringer Nature社刊行の「Nature Communications」で発表される。
本研究開発は、科学技術振興機構のCREST「新たな光機能や光物性の発現・利活用を基軸とする次世代フォトニクスの基盤技術」(JPMJCR15N4)および「情報担体を活用した集積デバイス・システム」(JPMJCR21C3)の支援を受けて行った。
<プレスリリース資料>
- 本文 PDF(663KB)
<論文タイトル>
- “On-chip bacterial foraging training in silicon photonic circuits for projection-enabled nonlinear classification”
- DOI:10.1038/s41467-022-30906-3
<お問い合わせ先>
-
<研究に関すること>
山田 浩治(ヤマダ コウジ)
産業技術総合研究所 プラットフォームフォトニクス研究センター 総括研究主幹
〒305-8569 茨城県つくば市小野川16-1 西事業所TIA棟
Tel:029-861-3699 Fax:029-861-5259
E-mail:yamada.kojiaist.go.jp
コン グアンウエイ
産業技術総合研究所 プラットフォームフォトニクス研究センター 主任研究員
〒305-8569 茨城県つくば市小野川16-1 西事業所TIA棟
Tel:029-861-5889 Fax:029-861-5259
E-mail:gw-congaist.go.jp
-
<JST事業に関すること>
嶋林 ゆう子(シマバヤシ ユウコ)
科学技術振興機構 戦略研究推進部 グリーンイノベーショングループ
〒102-0076 東京都千代田区五番町7 K’s五番町
Tel:03-3512-3531 Fax:03-3222-2066
E-mail:crestjst.go.jp
-
<報道担当>
産業技術総合研究所 広報部 報道室
Tel:029-862-6216
E-mail:hodo-mlaist.go.jp
日本電信電話株式会社 先端技術総合研究所 広報担当
E-mail:nttrd-pr
ml.ntt.com
科学技術振興機構 広報課
〒102-8666 東京都千代田区四番町5番地3
Tel:03-5214-8404 Fax:03-5214-8432
E-mail:jstkohojst.go.jp