京都大学 化学研究所の大宮 寛久 教授、金沢大学 医薬保健研究域薬学系の長尾 一哲 助教、同大学 大学院医薬保健学総合研究科 創薬科学専攻 博士前期課程2年(研究当時)の古戸 大芽さんらの共同研究グループは、青色LEDと、金属を含まない有機光酸化還元触媒によって駆動する転位反応を開発し、複雑なカルボニル化合物を自在に合成することに成功しました。
転位反応は通常の化学結合形成反応では実現困難な「分子構造の骨格組み換え」が実現できるため、複雑な生理活性天然物の全合成に古くから用いられてきました。中でも、各種有用化学品の合成に適用できる「セミピナコール転位」は、α-ヒドロキシカルボカチオンを共通中間体とし、かさ高いカルボニル化合物を与える転位反応の1つとして知られています。しかし、転位反応のための出発原料の供給が困難であることや、カルボカチオンを発生させるためには強力な酸性もしくは酸化条件が必要であることといった問題点がありました。
本研究では、青色LEDと有機光酸化還元触媒を活用することで、容易に合成可能なβ-ヒドロキシカルボン酸誘導体が、従来法より穏和な反応条件でセミピナコール転位を起こすことを見いだしました。本手法により、複雑なカルボニル化合物を迅速かつ高効率で供給することができ、生理活性天然物の全合成や創薬研究の加速につながると期待されます。
本成果は、2022年5月13日(現地時刻)に国際学術誌「Nature Communications」にオンライン掲載されました。
本研究は、JSPS 科学研究費補助金「基盤研究A(JP21H04681)」、「若手研究(JP21K15223)」、「新学術領域研究(JP17H06449)」、「学術変革領域研究A(JP21H05388)」、有機合成化学協会 研究企画賞「大正製薬 研究企画賞」、JST 戦略的創造研究推進事業 さきがけ「電子やイオン等の能動的制御と反応(JPMIPR19T2)」の支援を受けて実施されました。
<プレスリリース資料>
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<論文タイトル>
- “Organophotoredox-Catalyzed Semipinacol Rearrangement via Radical-Polar Crossover”
- DOI:10.1038/s41467-022-30395-4
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京都大学 化学研究所 教授
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