東京大学,電磁材料研究所,慶應義塾大学,科学技術振興機構(JST)

令和4年4月28日

東京大学
電磁材料研究所
慶應義塾大学
科学技術振興機構(JST)

広帯域トポロジカル光導波路を実現する手法を発見

~光回路技術の新たな可能性を開く~

ポイント

カイラルエッジ状態と呼ばれる特殊な光状態を活用することで、一方向のみに光を伝送するトポロジカル光導波路を実現できることが知られています。この導波路は、作製時に生じる構造ゆらぎや欠陥などがあっても散乱や反射なく光を伝送できることから、光配線などに利用される光集積回路の高密度化、高機能化を可能にすると期待されています。しかし、このカイラルエッジ状態を活用したトポロジカル光導波路を、光集積回路の主な動作波長である光通信波長域において広い波長範囲で機能させることは難しいと考えられてきました。

東京大学 先端科学技術研究センターの刘 天際 特任助教(研究当時)、岩本 敏 教授、慶應義塾大学の太田 泰友 准教授および電磁材料研究所の小林 伸聖 主席研究員、池田 賢司 主任研究員らの研究グループは、誘電率がゼロに近い値を示すENZと呼ばれる特性を持つ磁気光学材料(磁気光学効果を示す材料)を含むフォトニック結晶の構造に注目し、数値解析を行いました。その結果、ENZ特性を持つ磁気光学材料を用いることにより、過去の報告の1000倍以上の広い波長帯域で動作可能な広帯域トポロジカル導波路の実現が可能であることを明らかにしました。

この成果は、従来技術では実現が困難であった一方向性導波路など、トポロジーを活用した光集積デバイスの可能性を開くものであり、集積光回路技術に基づくさまざまな応用において、その高効率化、高機能化に貢献することが期待されます。

本研究成果は、2022年4月27日(太平洋夏時間)に米国科学誌「ACS Photonics」のオンライン版に掲載されます。

本研究は、科学技術振興機構(JST) 戦略的創造研究推進事業 CREST「トポロジカル集積光デバイスの創成」(JPMJCR19T1)、科研費・基盤研究(S)(17H06138)、科研費・基盤研究(C)(17K06849、19K05300)、科研費・挑戦的研究(萌芽)(19K21959)および日本板硝子材料工学助成会の支援により実施されました。

<プレスリリース資料>

<論文タイトル>

“Topological bandgaps enlarged in epsilon-near-zero magneto-optical photonic crystals”
DOI:10.1021/acsphotonics.1c01942

<お問い合わせ先>

(英文)“Building a One-Way Street for Light”

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