東京大学,科学技術振興機構(JST),日本医療研究開発機構

令和4年2月26日

東京大学
科学技術振興機構(JST)
日本医療研究開発機構

認知症の病因「タウたんぱく質」が脳から除去されるメカニズムを解明

~脳内のグリアリンパ系がタウを押し流すことを発見~

ポイント

超高齢化を迎える現代社会において、認知症の克服は喫緊の課題です。タウは、アルツハイマー病を始めとするさまざまな神経変性疾患で脳に蓄積して、神経細胞の死を招く、認知症の原因となるたんぱく質です。しかしタウの蓄積を防止することにより神経細胞死を食い止める治療法は、これまでに開発されていませんでした。

東京大学 大学院医学系研究科の石田 和久 特任研究員、山田 薫 助教、岩坪 威 教授らの研究グループは、タウが脳内から除去される仕組みを明らかにすることが認知症の発症予防につながると考え、脳の細胞外での体液の流れに着目しました。研究チームは、マウスを用いた実験で脳内の老廃物を除去するグリアリンパ系(グリンパティックシステム)の仕組みによって、タウたんぱく質が脳内から脳脊髄液に移動し、その後、頚部のリンパ節を通って脳の外へ除去されていること、またこの過程にアクアポリン4というたんぱく質が関与していることを明らかにしました。さらにアクアポリン4を欠損し、脳からのタウの除去が低下しているマウスでは、神経細胞内のタウ蓄積が増加し、神経細胞死も助長されることが分かりました。本研究は慶應義塾大学 医学部の安井 正人 教授、阿部 陽一郎 講師との共同研究として行われました。

本研究は、日本医療研究開発機構(AMED)「革新的技術による脳機能ネットワークの全容解明プロジェクト」(課題番号:JP20dm0207073)、科学技術振興機構(JST) 戦略的創造研究推進事業(CREST)「細胞外微粒子に起因する生命現象の解明とその制御に向けた基盤技術の創出」(課題番号:JPMJCR18H3)、日本学術振興会(JSPS) 科学研究補助金 基盤研究(C)(課題番号:18K07388)、日本学術振興会(JSPS) 科学研究補助金 基盤研究(A)(課題番号:20H00525)、新潟大学 脳研究所 共同研究費補助金(課題番号:#20012)、東大病院・ニプロ 共同研究開発プロジェクトの支援を受けて実施しました。

<プレスリリース資料>

<論文タイトル>

“Glymphatic system clears extracellular tau and protects from tau aggregation and neurodegeneration”
DOI:10.1084/jem.20211275

<お問い合わせ先>

(英文)“Glymphatic system clears extracellular tau and protects from tau aggregation and neurodegeneration”

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