ポイント
- 人間の手に装着し、他の身体部位と独立に動かせる人工指-sixth finger-を初めて開発
- 使用に短時間慣れることで、自身の身体の一部と感じる(身体化する)ことが可能
- 人間の身体拡張の可能性を実験的に実証
電気通信大学 大学院情報理工学研究科の梅沢 昂平 氏(当時 大学院生)、鈴木 悠汰 氏(当時 大学院生)、宮脇 陽一 教授らは、フランス国立科学研究センター(CNRS)のGowrishankar Ganesh 主任研究員と共同で、他の身体の部分と独立して動かすことができる人工身体部位である“sixth finger”を開発し、自らの身体の一部として取り込む(身体化する)実験に成功しました。
私たちの脳は、身体の変化にとても柔軟に対応できることが知られています。では、私たちが生得的に持たない身体部位が人工的に与えられたときでも、それを自らの身体として感じ、自由に動かすことはできるのでしょうか。こうした可能性を検証する1つの方法として、ロボットアームや指型の機械を自らの身体に装着し、それを他の身体部位(例えば足など)の動きで動かす研究が近年行われています。しかし、こうした従来の試みは全て、既存の身体部位の機能や動きを人工身体のそれへと置き換えているにすぎません。自らが生得的に持つ身体の機能や動きはそのままで、それらとは独立して制御することが可能な新しい人工身体を人間は獲得することができるでしょうか。
こうした問いに答えるため、我々の研究グループは、まず他の身体部位の機能や動きと独立して制御可能であり、手のひらに簡易に装着可能な“sixth finger”を開発しました。次に、このsixth fingerの使用に短時間(1時間程度)慣れることにより、それが自分の身体の一部と感じられた(身体化した)時に起こる感覚と行動の変容を捉えることに世界で初めて成功しました。これらの結果は、人間は自らの既存身体部位の機能と干渉することなく新しい付加的身体を取り込み、自らの身体を拡張できる可能性を実験的に証明したものです。
本研究の成果は、「Scientific Reports」誌に、2022年2月14日(日本時間)に掲載されます。
本研究は、科研費 挑戦的萌芽研究(15K12623)およびJST ERATO 稲見自在化身体プロジェクト(JPMJER1701)の支援を受けて実施されました。
<プレスリリース資料>
- 本文 PDF(481KB)
<論文タイトル>
- “Bodily ownership of an independent supernumerary limb: an exploratory study”
- DOI:10.1038/s41598-022-06040-x
<お問い合わせ先>
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