ポイント
- 原核生物ゲノムの基本構造であるオペロンが挿入配列の働きで進化したとする新たな仮説を提唱し、その実証実験に成功しました。
- 世界で初めて、原核生物のオペロンが形成されていく進化過程を実験室で再現可能な形で観測しました。
- オペロンの進化を繰り返し観測できるようにしたことで、遺伝子制御機構がいかに進化し、複雑化してきたかの理解につながると期待できます。
原核生物では、機能が関連した複数の遺伝子が、オペロンと呼ばれる構造にまとめられて制御されています。原核生物が持つ精巧なオペロンがいかにして生じてきたかは、古くから謎とされてきました。
今回、東京大学 大学院理学系研究科の金井 雄樹 大学院生、津留 三良 特任助教、古澤 力教授らは、原核生物のゲノムに普遍的な挿入配列と呼ばれる配列によって、オペロンを形成する進化が駆動されるとする新たな仮説を提唱しました。また、大腸菌を実験室で挿入配列の活性が高い条件で培養することで、仮説通りにオペロンが形成されうることを実証しました。これは、今まで未知であった原核生物のオペロンの形成メカニズムの1つを、進化過程の観測によって初めて実証した研究です。
病原性大腸菌O157などの病原菌でよく見られる挿入配列によってオペロンが形成されうることは、細菌の病原性の獲得や制御における新たな知見を与えるものです。また、本研究によって、オペロン形成を繰り返し再現できる実験条件が明らかになりました。この成果によって、今後、原始的な生物がオペロンを獲得して現生の原核生物へと近づいた過程の解明が期待できます。
本研究は、日本学術振興会・科学研究費助成事業(21J20693、18H02427、17H06389)、科学技術振興機構(JST)・ERATO(JPMJER1902)などの支援を受けて行われました。
<プレスリリース資料>
- 本文 PDF(503KB)
<論文タイトル>
- “Experimental demonstration of operon formation catalyzed by insertion sequence”
- DOI:10.1093/nar/gkac004
<お問い合わせ先>
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<研究に関すること>
津留 三良(ツル サブロウ)
東京大学 大学院理学系研究科附属生物普遍性研究機構 特任助教
Tel:03-5841-4229
E-mail:tsuruubi.s.u-tokyo.ac.jp
古澤 力(フルサワ チカラ)
東京大学 大学院理学系研究科附属生物普遍性研究機構 教授
Tel:03-5841-4512
E-mail:furusawaubi.s.u-tokyo.ac.jp
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<JST事業に関すること>
内田 信裕(ウチダ ノブヒロ)
〒102-0076 東京都千代田区五番町7 K’s五番町
科学技術振興機構 研究プロジェクト推進部
Tel:03-3512-3528 Fax:03-3222-2068
E-mail:eratowwwjst.go.jp
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<報道担当>
東京大学 大学院理学系研究科・理学部 広報室
武田 加奈子(タケダ カナコ)特任専門職員、飯野 雄一(イイノ ユウイチ)教授・広報室長
Tel:03-5841-0654
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理化学研究所 広報室 報道担当
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科学技術振興機構 広報課
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Tel:03-5214-8404 Fax:03-5214-8432
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