ポイント
- IoTデバイスでは使用できる電力量に厳しい制限がある
- スパイク信号で動作する神経回路を模倣した、新しい超省エネIoT制御技術を確立した
- 厳しい電力制限下でも高度な制御が行えるIoTデバイスの実現が期待される
モノのインターネット(IoT)では、最末端に配置されたデバイスで外部の情報をセンシングし、無線で送信しなければなりません。しかしそのような最末端デバイスへの電源供給は難しく、使用できる電力は、かつてないほど厳しく制限されます。従来技術では「クロック」と呼ばれる一定周波数の信号を用いて回路全体を制御していましたが、必要な時に必要な場所だけ回路を動作させることはできず、消費電力に無駄がありました。
これに対して生物の神経回路では、個々の神経細胞(ニューロン)がスパイク信号を利用することで必要な時に必要な場所だけ動作しています。本研究ではこれに倣い、クロックの代わりにニューロン回路を用いてIoTデバイスを超省エネで電子制御する技術を確立しました。
九州大学 大学院システム情報科学研究院の矢嶋 赳彬 准教授の研究グループは、独自に設計したニューロン回路を用いて、局所的に電子回路のタイミングを制御する仕組みを開発しました。余分な機能を省きタイミング制御だけに特化することで、世界最小の消費電力(1.2ピコワット)で動作するニューロン回路を実現しました。このニューロン回路の応用例として、IoTデバイスの標準機能である直流電圧変換を1ナノワット程度の超低消費電力で実現できることを実証しました。
ニューロン回路を用いた電子制御は、センサー・無線・電源供給などIoTデバイスで必要とされるさまざまな機能に応用可能です。これらを数ナノワットの超低消費電力で電子制御できれば、環境発電によって半永久的に動作する小型IoTデバイスを実現することができます。
本研究成果は、イギリスの雑誌「Scientific Reports」に2022年1月21日(金)(日本時間)に掲載されます。
本研究は、JST 戦略的創造研究推進事業 CREST(JPMJCR21Q2、JPMJCR19K2)、ロッテ財団の助成を受けたものです。
<プレスリリース資料>
- 本文 PDF(890KB)
<論文タイトル>
- “Ultra‑low‑power switching circuits based on a binary pattern generator with spiking neurons”
- DOI:10.1038/s41598-022-04982-w
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矢嶋 赳彬(ヤジマ タケアキ)
九州大学 大学院システム情報科学研究院 准教授
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