ポイント
- 量子インターネットを実現するためには、遠隔量子もつれを生成し、その量子もつれをさまざまな量子デバイスに供給する能力を持った量子中継器が必要である。
- 幾何学的な自由度を用いることで、異なる量子系と互換性の高いゼロ磁場でのスピン量子ビットと光子の量子もつれ生成に成功した。
- 幾何学的な性質によりもつれ状態が時間に依存しないため、ノイズ耐性のある量子インターネットへの道を開く。
横浜国立大学 大学院工学研究院/先端科学高等研究院の小坂 英男 教授、関口 雄平 助教らは、ダイヤモンド中の電子をゼロ磁場環境で制御することで、電子と自然放出される光子の幾何学的な量子もつれの生成に世界で初めて成功しました。
研究グループは、ダイヤモンド中の窒素空孔中心(NV中心)の電子がゼロ磁場で形成する幾何学的な自由度と、同様に幾何学的な性質を持つ光子の偏光の自由度が、自然放出によって量子もつれを形成することを実証しました。これによって放出された光子を遠隔ダイヤモンド中の核子に量子テレポーテーションの原理で転写することで量子中継の鍵となる遠隔量子メモリー間の量子もつれを生成することが可能になります。この手法は、従来必須であった光子の時間、周波数、および空間の精密なモード整合を必要としないためノイズ耐性が高いことに加え、磁場を加えないため超伝導のような異種材料からなる量子デバイスとの互換性にも優れています。
本成果は、量子コンピューター、量子シミュレーター、および量子センサーを含む量子デバイスを量子的につなぐ通信基盤である量子インターネットの要素技術として新たな可能性を開きます。
本研究成果は2021年12月15日(英国時間)に、「Nature Research」が発行する「Communications Physics」のオンライン版で公開されます。
本研究は、科学技術振興機構(JST)「戦略的創造研究推進事業(CREST)」(課題番号 JPMJCR1773)、JST「ムーンショット型研究開発事業 目標6」(課題番号 JPMJMS2062)、日本学術振興会「科学研究費助成事業」(課題番号20H05661、20K20441)、総務省「ICT重点技術の研究開発プロジェクト グローバル量子暗号通信網構築のための研究開発」(課題番号JPMI00316)の支援を受けました。
<プレスリリース資料>
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<論文タイトル>
- “Geometric entanglement of a photon and spin qubits in diamond”
- DOI:10.1038/s42005-021-00767-1
<お問い合わせ先>
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