東京大学,科学技術振興機構(JST)

令和3年11月30日

東京大学
科学技術振興機構(JST)

乾燥ワカメのようにゲルが吸水して膨らむ速度の法則を解明

~アインシュタインの関係式と負のエネルギー弾性から発想~

ポイント

ゲルは、ゼリーなどの食品や、ソフトコンタクトレンズなどの医用材料に活用される、ウェットでやわらかい物質です。乾燥ワカメや紙おむつの吸水剤のように、水に浸したゲルは周囲の水を吸収して膨らみますが、膨らむ速度の温度変化を決める物理法則は未解明でした。

今回、東京大学 大学院工学系研究科の藤藪 岳志 大学院生、作道 直幸 特任講師、酒井 崇匡 教授らの研究グループは、構造が明確なゲルを用いて世界最高精度の測定を行い、ゲルの膨らむ速度の温度変化について、新しい法則を発見しました。この新しい法則は、アインシュタインの提唱したブラウン運動(水中の微粒子の不規則な熱運動)の理論と、最近の発見であるゲルのやわらかさを決める「負のエネルギー弾性」から着想を得て、両者のアイデアを組み合わせることで、明らかになりました。

ゲルは、生体軟組織との類似性が高いため、生体と接触して使用される医用材料としてさらなる応用が期待されています。本研究は、バイオセンサーやドラッグデリバリーシステムにおける薬物送達キャリアなど、ゲルの形態変化を伴う製品の開発に役立つと考えられます。

本研究成果は、米国物理学会発行の学術雑誌「Physical Review Letters」のオンライン版に2021年11月30日(米国東部時間)に掲載されます。

本研究は、JSPS科研費・基盤研究A(21H04688、21H04952)、学術変革領域研究(20H05733)、若手研究(19K14672、20K15338)、特別研究員奨励費(19J22561、21J13478)、および科学技術振興機構(JST) 戦略的創造研究推進事業 CREST(No.JPMJCR1992)、センター・オブ・イノベーション(COI)プログラム(No.JPMJCE1304)の支援を受けたものです。

<プレスリリース資料>

<論文タイトル>

“Temperature dependence of polymer network diffusion”
DOI:10.1103/PhysRevLett.127.237801

<お問い合わせ先>

(英文)“Temperature dependence of polymer network diffusion”

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