理化学研究所,科学技術振興機構(JST)

令和3年11月19日

理化学研究所
科学技術振興機構(JST)

数十億枚のナノシートが協働する波運動

~繊毛運動のような輸送機能を実現~

理化学研究所(理研) 創発物性科学研究センター 創発生体関連ソフトマター研究チームの佐野 航季 基礎科学特別研究員(研究当時、現 信州大学 繊維学部 助教、科学技術振興機構(JST) さきがけ研究者)、石田 康博 チームリーダー、相田 卓三 副センター長(理研創発物性科学研究センター 創発ソフトマター機能研究グループ グループディレクター)らの共同研究グループは、数十億枚もの無機ナノシートを水中で協働させることで、繊毛運動のような輸送機能を示す波運動を実現しました。

本研究成果は、無数のナノユニットを集積・連動させて、精密機械のような動的システムを構築するための新たな設計指針になると期待できます。

生体内では、たんぱく質などの動的ナノユニットが三次元秩序構造へ集積・協働することで、個々の小さく単純な動きが巨視的で精緻な動きへとつながっています。今日まで、分子機械や自己駆動コロイド粒子といった動的ナノユニットが人工的に合成されてきましたが、これらの協働による巨視的な機能発現は依然困難です。

今回、共同研究グループは、酸化チタンナノシートを水中に精密に配列させ、化学的刺激を与えることで、数十億枚ものナノシートが協働的に動き、空間的かつ時間的に秩序を持つ巨視的な波運動が発生することを見いだしました。この波は繊毛運動のように一方向に伝播し、均一な速度で微粒子を輸送できます。

本研究は、オンライン科学雑誌「Nature Communications」(2021年11月19日付)に掲載されます。

本研究はJST 戦略的創造研究推進事業 さきがけ「原子・分子の自在配列と特性・機能(研究総括:西原 寛)」の研究課題「ナノシートの配列制御に基づく革新的ソフトマテリアルの創成(研究者:佐野 航季)」およびCREST「新たな光機能や光物性の発現・利活用を基軸とする次世代フォトニクスの基盤技術(研究総括:北山 研一)」の研究課題「殆どが水よりなる動的フォトニック結晶の開発と応用(研究代表者:石田 康博)」、日本学術振興会(JSPS)科学研究費補助金研究活動スタート支援「空間的かつ時間的に秩序を有する無機ナノシートの集合構造(研究代表者:佐野 航季)」、同若手研究「磁気斥力を内包したソフトマテリアルの開発(同)」、同基盤研究(S)「マルチスケール界面分子科学による革新的機能材料の創成(研究代表者:相田 卓三)」などの支援を受けて行われました。

<プレスリリース資料>

<論文タイトル>

“Propagating wave in a fluid by coherent motion of 2D colloids”
DOI:10.1038/s41467-021-26917-1

<お問い合わせ先>

(英文)“Creating coherent motion based on coordinated microscopic movements”

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