ポイント
- 次世代型太陽電池として期待されるペロブスカイト太陽電池は寿命が短い(耐久性が低い)ことが最大の課題でした。
- 炭素電極を備えたペロブスカイト太陽電池の性能が光照射によって回復する新メカニズムを提唱し、その寿命(耐久性)を屋外環境20年相当まで改善できることを実証しました。
- 低コストな次世代型太陽電池の実用化に大きく前進し、SDGsへの貢献が期待されます。
戦略的国際共同研究プログラム(SICORP) EIG CONCERT-Japan「超空間制御による機能材料」において、兵庫県立大学 大学院工学研究科 伊藤 省吾 教授、同大学 大学院工学研究科 辻 流輝 大学院学生(博士後期課程)、紀州技研工業株式会社 小林 英治 研究員、Solaronix S.A.(スイス)David Martineau 研究員、Fraunhofer ISE(ドイツ)Andreas Hinsch シニア・リサーチ・フェローからなる共同研究グループは、炭素電極を備えたペロブスカイト太陽電池の性能が光照射によって回復するメカニズムを提唱し、ペロブスカイト太陽電池で世界最長となる屋外環境20年相当の寿命(耐久性)を加速劣化試験(ダンプヒート試験および熱サイクル試験、共にIEC 61215:2021を準拠、規格に対して試験期間を3倍に延長)により実証しました。
炭素電極を備えたペロブスカイト太陽電池は、①真空プロセスを必要とせず、炭素電極は金属電極に比べて安価であること(製造コスト削減)、②完全塗布型の工程で軽量基板の利用が容易であり、軽量性を確保しやすいこと、③主要な材料である炭素電極(グラファイト)とヨウ素の生産量は、日本が世界シェア20~30パーセントを占めており、高い競争力を持つことが期待されます。一方、ペロブスカイト太陽電池は寿命が短い(耐久性が低い)ことが最大の課題でした。
本研究の成果はペロブスカイト太陽電池の実用化に向けて大きな前進となりました。従来技術と比較して軽量で作製可能なペロブスカイト太陽電池であれば、これまで導入が困難であった場所にも太陽電池の設置ができるようになり、SDGsの達成に向けた貢献が期待されます。
本研究成果は、2021年11月13日(日本時間)に、世界的に権威のある米国Cell Pressのオープンアクセス誌「Cell Reports Physical Science」で公開されます。
本成果は、以下の事業・研究領域・研究課題によって得られました。
戦略的国際共同研究プログラム(SICORP)
研究領域 | EIG CONCERT-Japan 「超空間制御による機能材料」 |
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研究課題 | 印刷による完全無機多孔質金属酸化物を基礎としたペロブスカイト太陽電池: 高効率・低価格デバイス構造のための電荷選択酸化物の決定(PROPER) |
研究代表者 | 伊藤 省吾(兵庫県立大学 大学院工学研究科 教授) |
研究期間 | 2019年4月1日~2022年3月31日 |
<プレスリリース資料>
- 本文 PDF(564KB)
<論文タイトル>
- “Light-induced performance increase of carbon-based perovskite solar module for 20- year stability ”
- DOI:10.1016/j.xcrp.2021.100648
<お問い合わせ先>
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伊藤 省吾(イトウ セイゴ)
兵庫県立大学 大学院工学研究科 材料・放射光工学専攻 教授
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Tel:079-267-4908
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紀州技研工業株式会社 開発本部 PE開発部
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