大阪大学,科学技術振興機構(JST)

令和3年11月12日

大阪大学
科学技術振興機構(JST)

電子の集団振動で光子を量子ドットへ運ぶ

~表面プラズモンアンテナにより量子インターフェースの高効率化に成功~

ポイント

大阪大学 産業科学研究所の深井 利央さん(博士後期課程(研究当時))、藤田 高史 助教、木山 治樹 助教、大岩 顕 教授(兼 量子情報・量子生命研究センター)らの研究グループは、表面プラズモンポラリトンという光で励起される電子の集団振動を利用して、半導体横型量子ドットへの光子の照射をより効率的に行うことが可能であることを世界で初めて明らかにしました。

半導体量子ドット中の電子スピンは量子コンピュータの量子ビットであり、一方、光子は量子通信の量子ビットです。この量子の間で量子情報を変換できると量子中継が可能となり、絶対に安全な通信や量子インターネットなど将来の量子情報のインフラ構築に貢献します。これまで数100ナノメートル程度の極めて微小な量子ドットに単一光子を正確に照射することは極めて困難で、1万から10万回光子を照射しても1回程度しか量子ドット中の単一電子へ変換されないという低い変換効率が大きな問題でした。これは将来、量子通信の通信速度を律速し、実用化を阻む大きな要因の1つでした。

今回、大岩教授らの研究グループは、同心円状のリング構造を持つ表面プラズモンアンテナをGaAs量子ドットの直上に作製し、アンテナの表面を伝搬する電子の集団振動により、垂直に照射した光を効率的に中央の開口部に集光することで、量子ドットへの光子の照射効率を大幅に向上することに成功しました。この成果は長距離の量子暗号通信や量子インターネットの構築を可能にする量子中継器の開発を加速することが期待されます。

本研究成果は、日本科学誌「Applied Physics Express」に、2021年11月10日(水)に公開されました。

本研究は、JST 戦略的創造研究推進事業 CREST研究「電子フォトニクス融合によるポアンカレインターフェースの創製(JPMJCR15N2)」と科学研究費補助金 基盤研究(S)(17H06120)の一環として行われました。

<プレスリリース資料>

<論文タイトル>

“Detection of photogenerated single electrons in a lateral quantum dot with a surface plasmon antenna”
DOI:10.35848/1882-0786/ac336d

<お問い合わせ先>

(英文)“A nanoantenna for long-distance, ultra-secure communication”

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