熊本大学,科学技術振興機構(JST)

令和3年10月13日

熊本大学
科学技術振興機構(JST)

HIVは宿主(ヒト)のRNA修飾を悪用して感染・増殖する

~新しい戦略の抗ウイルス薬の開発に期待~

ポイント

ウイルスは、宿主を利用して自己の複製を行いますが、宿主のRNA分子における化学修飾の仕組みを免疫回避などに巧みに利用することが知られてきました。コロナウイルスに対するメッセンジャーRNA(mRNA)ワクチンはこの性質を応用しており、あらかじめ人工的に修飾したmRNAワクチンを投与することで、修飾されたmRNAを細胞が異物として認識しにくくなるため、ワクチンとして使用することができます。この度、熊本大学 大学院生命科学研究部の中條 岳志 助教(JST 創発的研究支援事業研究者)、富澤 一仁 教授、大学院医学教育部 博士課程の福田 博之 大学院生(当時)、の研究チームは、東北大学の魏 范研 教授(JST 創発的研究支援事業研究者)、国際医療福祉大学の貝塚 拓 講師とともに、ヒト免疫不全ウイルス1型(HIV-1)がヒト細胞で感染/複製する際に、ヒトのトランスファーRNA(tRNA)の修飾を利用する2つの仕組みを解明しました。1つ目に、HIV-1のゲノム複製時の役割として、ヒトのリジンtRNAの58塩基目と54塩基目のメチル化修飾が、HIV-1ゲノム複製に必要な逆転写の適切な位置での停止に重要であることを証明しました。2つ目に、HIV-1たんぱく質とウイルス粒子の合成においても、tRNA 58塩基目のメチル化機構が重要であることを発見しました。

HIV-1が引き起こす後天性免疫不全症候群(AIDS)は、現在はその進行と発症をかなり抑えられる病気です。しかし、HIV-1は複製の際に変異しやすい特性があり、その薬剤耐性化が問題になっています。本研究成果により、tRNAのメチル化がHIV-1の複製に重要であることが分かったため、薬剤耐性化が起こりにくい画期的なAIDS治療薬の開発につながる可能性があります。

本研究成果は、HIV-1複製の「アキレス腱」を2つ解明したものであり、人類を今後のさまざまなウイルスの脅威から守る方法を開発するための基盤知見となる可能性を秘めています。

本研究成果は、2021年10月13日に英国科学雑誌「Nucleic Acids Research」に掲載されます。

本研究は、科学技術振興機構(JST) 創発的研究支援事業の研究課題:「RNA修飾編集技術の創発とその治療への応用」(JPMJFR204Z)研究代表者:中條 岳志、および日本学術振興会 科学研究費助成事業などの支援を受けて行われました。

<プレスリリース資料>

<論文タイトル>

“Cooperative methylation of human tRNA3Lys at positions A58 and U54 drives the early and late steps of HIV-1 replication”
DOI:10.1093/nar/gkab879

<お問い合わせ先>

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