ポイント
- これまで10元素以上で構成される均一な合金は作製が困難だった。
- 触媒として使用される14元素を均一に含んだ「ナノポーラス超多元触媒」の開発に成功。14元素を含んだアルミ合金を作製し、アルカリ溶液中でアルミを優先的に溶かすという簡便な方法で作製できる。
- 多元素重畳効果(カクテル効果)により、水の電気分解用電極材として優れた特性を持つことから、今後多方面での応用が期待できる。
JST 戦略的創造研究推進事業において、高知工科大学 環境理工学群のチャイ ゼシン 助教、藤田 武志 教授、東京工業大学 物質理工学院 材料系の宮内 雅浩 教授の共同研究グループは、触媒として使用される14元素を原子レベルで均一に混ぜ合わせた「ナノポーラス超多元触媒」の開発に成功しました。
作製方法は簡便であり、合金から特定の元素を選択的に腐食させて、溶出させる脱合金化という方法で達成しました。14元素を含んだアルミ合金を作製し、アルカリ溶液中でアルミを優先的に溶かすだけでナノポーラス超多元触媒を作製することができます。この方法により、孔のサイズが約5ナノメートルの比表面積(物体の単位質量あたりの表面積)の大きいナノポーラス構造ができると同時に、アルカリ溶液に溶けないアルミ以外の元素が集まって凝集し、原子レベルで14元素が均一に分布した固溶体合金になることが分かりました。
また、ナノポーラス超多元触媒は、多元素重畳効果(カクテル効果)によって水の電気分解用電極材として優れた特性を持つことが分かりました。多種の元素を含有していることから、今後、多能性・万能性のある触媒の実現に向けた展開が期待されます。
本研究成果は、2021年8月20日(英国時間)に国際科学誌「Chemical Science」のオンライン版で公開される予定です。
本成果は、以下の事業・研究領域・研究課題によって得られました。
戦略的創造研究推進事業 チーム型研究(CREST)
研究領域 | 「多様な天然炭素資源の活用に資する革新的触媒と創出技術」 (研究総括:上田 渉 神奈川大学 工学部物質生命化学科 教授) |
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研究課題名 | 「高効率メタン転換へのナノ相分離触媒の創成」 |
研究代表者 | 阿部 英樹(物質・材料研究機構 エネルギー・環境材料研究拠点 主幹研究員) |
研究期間 | 2015年度~2022年度 |
JSTはこの領域で、多様な天然炭素資源をバランスよく活用できる将来の産業基盤の確立に向けて、その根幹をなすメタンをはじめとするアルカンガス資源を従来にない形で有用な化成品・エネルギーに変換するための革新的な触媒の創出を推進します。
上記研究課題では、メタンや二酸化炭素などの安価で豊富な炭素資源を熱や光などの異なったエネルギーを利用してアルコールや液体炭化水素などの有用な炭素資源に転換(C1転換)する高機能触媒材料の開発に挑みます。
<プレスリリース資料>
- 本文 PDF(766KB)
<論文タイトル>
- “Nanoporous ultra-high-entropy alloys containing fourteen elements for water splitting electrocatalysis”
- DOI:10.1039/d1sc01981c
<お問い合わせ先>
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<研究に関すること>
藤田 武志(フジタ タケシ)
高知工科大学 環境理工学群 教授
〒782-8502 高知県香美市土佐山田町宮ノ口185
Tel:0887-57-2508 Fax:0887-57-2520
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<JST事業に関すること>
嶋林 ゆう子(シマバヤシ ユウコ)
科学技術振興機構 戦略研究推進部 グリーンイノベーショングループ
〒102-0076 東京都千代田区五番町7 K’s五番町
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