理化学研究所,東京大学,科学技術振興機構(JST)

令和3年8月19日

理化学研究所
東京大学
科学技術振興機構(JST)

創発インダクタの室温動作を実証

~インダクタ素子の微細化に向けた飛躍~

理化学研究所(理研) 創発物性科学研究センター 強相関物性研究グループの北折 曉 研修生(東京大学 大学院工学系研究科 博士課程2年)、金澤 直也 客員研究員(東京大学 大学院工学系研究科 講師)、強相関理論研究グループの永長 直人 グループディレクター(東京大学 大学院工学系研究科 教授)、十倉 好紀 センター長(理研 強相関物性研究グループ グループディレクター、東京大学 卓越教授/東京大学 国際高等研究所東京カレッジ)らの研究グループは、「創発電磁場」と呼ばれるナノ磁気構造がもたらす巨大な実効電磁場を利用した「創発インダクタ」の室温動作に成功しました。

本研究成果は、創発インダクタの応用化に向けて課題となっていた動作温度の飛躍的な向上を実現したもので、身の回りの電気機器に必要な素子の1つであるインダクタの微細化につながることが期待できます。

今回、研究グループは、らせん磁気構造を示すYMnSn(Y:イットリウム、Mn:マンガン、Sn:スズ)を用いて、室温において創発電場に由来するインダクタンスが生じることを実験的に示しました。従来のインダクタとは異なり、インダクタンスの大きさは素子を小さくするにつれて増大するため、素子の微細化に有効です。加えて、温度・磁場・電流密度の変化に応じてインダクタンスの符号が反転する新しい現象も観察されました。この結果は、スピンの電流駆動が生み出すインダクタンスに複数のメカニズムの競合が存在することを示唆しており、創発インダクタのさらなる機能の可能性が広がりました。

本研究は、科学雑誌「Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America(PNAS)」オンライン版(2021年8月14日付)に掲載されました。

本研究は、科学技術振興機構(JST) 戦略的創造研究推進事業 CREST「ナノスピン構造を用いた電子量子位相制御(研究代表者:永長 直人)」、「トポロジカル絶縁体ヘテロ接合による量子技術の基盤創成(研究代表者:川﨑 雅司)」、日本学術振興会(JSPS) 科学研究費補助金 基盤研究(B)「Zak位相制御による表面状態設計とスピントロ二クス機能実現(研究代表者:金澤 直也)」、同新学術領域研究(研究領域提案型)「トポロジカルスピン液晶制御と巨大電子散乱現象(研究代表者:金澤 直也)」、同基盤研究(A)「反転対称性が破れた電子系における非線形非相反応答の理論(研究代表者:永長 直人)」による支援を受けて行われました。

<プレスリリース資料>

<論文タイトル>

“Emergent electromagnetic induction beyond room temperature”
DOI:10.1073/pnas.2105422118

<お問い合わせ先>

(英文)“Emergent electromagnetic induction beyond room temperature”

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