理化学研究所,科学技術振興機構(JST)

令和3年6月10日

理化学研究所
科学技術振興機構(JST)

毛包幹細胞の発生起源を解明

~筒状の区画に幹細胞を誘導する「テレスコープモデル」の提唱~

理化学研究所(理研) 生命機能科学研究センター 細胞外環境研究チームの森田 梨津子 研究員、藤原 裕展 チームリーダーらの研究グループは、毛包の幹細胞が従来の定説とは異なる細胞に由来し、既知のメカニズムとは別の仕組みで誘導されることを明らかにしました。この発見から、毛包を構成する細胞の区画化と幹細胞誘導を同時に可能とする新しい形態形成モデル「テレスコープモデル」を提唱しました。

本研究成果は、毛包幹細胞の発生起源の定説を覆す発見であり、幹細胞生物学および再生医療研究の新たな基盤知識となることが期待できます。またテレスコープモデルは、さまざまな生物種の体表器官に共通する幹細胞誘導原理となる可能性があり、分野を超えて大きなインパクトを与えることが期待できます。

今回、研究グループは、1細胞レベルでマウス毛包の発生を経時観察する長期ex vivoライブイメージングと、1細胞トランスクリプトーム解析を組み合わせた独自のデータ駆動型手法を用いて、毛包幹細胞の発生起源の解明を目指しました。その結果、発生中の毛包は筒状に区画化されており、将来の幹細胞はその区画の1つから誘導されること、またこれらの区画は、毛包形成前の上皮シートでは同心円リング状の細胞プレパターンとして存在することを見いだしました。そして、リング状の細胞プレパターンから望遠鏡が伸びるように筒状の区画が形成される毛包発生の仕組みを、「テレスコープモデル」と名付けました。

本研究は、2021年6月9日(日本時間 6月10日)科学雑誌「Nature」のオンライン版に掲載されます。

本研究は、理化学研究所 運営費交付金(生命機能科学研究、分野横断連携研究 「一細胞プロジェクト」)、科学技術振興機構(JST) 戦略的創造研究推進事業 CREST「多細胞間での時空間的相互作用の理解を目指した定量的解析基盤の創出(研究総括:松田 道行)」領域の研究課題「体表多様性を創発する上皮―間充織相互作用の動的制御機構の解明(研究代表者:藤原 裕展)」、AMED 創薬等支援技術基盤プラットフォーム「毛包幹細胞の起源と誘導メカニズムの解明(研究代表者:藤原 裕展)」、日本学術振興会(JSPS) 科学研究費補助金若手研究(B)「細胞外環境依存的な毛包幹細胞の恒常性維持機構の解明(研究代表者:森田 梨津子)」「毛包幹細胞の起源と誘導メカニズムの解明(研究代表者:森田 梨津子)」、同基盤研究(C)「毛包幹細胞へのlineage primingに寄与する遺伝子ネットワークの同定(研究代表者:森田 梨津子)」、理研BDR-大塚製薬連携センター RBOC 2019年度公募プログラム「かけ橋」「毛包幹細胞へのlineage primingに寄与する遺伝子ネットワークの同定(研究代表者:森田 梨津子)」、第13回資生堂女性研究者サイエンスグラント「毛包上皮幹細胞へのlineage primingに寄与する細胞間相互作用の理解(研究代表者:森田 梨津子)」、科学技術振興機構(JST) 戦略的創造研究推進事業 CREST「統合1細胞解析のための革新的技術基盤(研究総括:菅野 純夫)」領域の研究課題「臓器・組織内未知細胞の命運・機能の1細胞オミクス同時計測(研究代表者:二階堂 愛)」による支援を受けて行われました。

<プレスリリース資料>

<論文タイトル>

“Tracing the origin of hair follicle stem cells”
DOI:10.1038/s41586-021-03638-5

<お問い合わせ先>

前に戻る