理化学研究所,東京大学大学院工学系研究科,科学技術振興機構(JST)

令和3年5月26日

理化学研究所
東京大学大学院工学系研究科
科学技術振興機構(JST)

酸化亜鉛でスピン軌道相互作用と電子相関の共存を実証

~新しい電子相開拓への手がかり~

理化学研究所(理研) 創発物性科学研究センター 強相関界面研究グループのデニス・マリエンコ 上級研究員、川﨑 雅司 グループディレクター(東京大学 大学院工学系研究科 教授)、小塚 裕介 客員研究員(科学技術振興機構 さきがけ研究者)、強相関物質研究グループのマルクス・クリーナー 上級研究員、強相関量子伝導研究チームの川村 稔専 任研究員、東京大学 大学院工学系研究科のサイード・バハラミー 特任講師(研究当時)らの国際共同研究グループは、高品質の酸化亜鉛においてスピン軌道相互作用効果と強いクーロン相互作用(電子相関)が共存することを実証しました。

本研究成果は、スピン軌道相互作用とクーロン相互作用の競合が引き起こす新しい電子相を開拓する手がかりとなります。

スピン軌道相互作用は、固体中で生じるさまざまなスピン依存伝導現象やそれを応用したスピントロニクス技術に必要な相互作用です。これまで、半導体のスピン軌道相互作用に関する研究は、クーロン相互作用が比較的弱い状況下で行われてきました。しかし、スピン軌道相互作用はクーロン相互作用と激しく競合する可能性があり、これらの2つの相互作用が共存する系では、新奇な電子状態が出現する可能性が理論的に指摘されています。

今回、国際共同研究グループは、半導体の中でも比較的強いクーロン相互作用が働くことが知られている高品質な酸化亜鉛において、電子にスピン軌道相互作用効果が働くことを電気伝導測定の実験によって明らかにしました。さらに、酸化亜鉛中の電子濃度を変化させることで、スピン軌道相互作用の大きさを制御できることを見いだしました。

本研究は、科学雑誌「Nature Communications」オンライン版に、2021年5月26日(日本時間)に掲載されます。

本研究は、科学技術振興機構(JST) 戦略的創造研究推進事業 CREST 研究課題「トポロジカル絶縁体ヘテロ接合による量子技術の基盤創成(研究代表者:川﨑 雅司)」、さきがけ 研究課題「量子計算のための高品質酸化亜鉛を用いた材料基盤創出(研究者:小塚 裕介)」などによる支援を受けて行われました。

<プレスリリース資料>

<論文タイトル>

“Interplay of spin-orbit coupling and Coulomb interaction in ZnO-based electron system”
DOI:10.1038/s41467-021-23483-4

<お問い合わせ先>

(英文)“Interplay of spin–orbit coupling and Coulomb interaction in ZnO-based electron system”

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