ポイント
- 誘電体ナノアンテナの磁気的な光学共鳴を利用して“磁気双極子遷移”を増大する技術を提案し実証しました。
- 本技術により、微弱であるためこれまで無視されていた光応答を利用できるようになります。
- 本研究の成果は、光の磁場成分を活用した新しい光化学反応経路の開拓につながると期待できます。
神戸大学 大学院工学研究科の杉本 泰 助教(JST さきがけ研究員)、藤井 稔 教授らの研究グループは、高い屈折率をもつ誘電体のナノアンテナを用いて、“磁気双極子遷移”による発光を大幅に増大する技術の開発に成功しました。
ナノアンテナは可視から近赤外領域に光学的な共鳴をもつ金属や誘電体のナノ構造であり、分子などの光吸収や光放出(発光)を増強することができます。従来の金属材料からなるナノアンテナは光の電場成分に強く応答し、主に“電気双極子遷移”に対して増強効果を示します。しかし、もう1つの遷移過程である“磁気双極子遷移”については、微弱であるためこれまでほとんど考慮されませんでした。本研究では、“磁気双極子遷移”を大幅に増強する誘電体ナノアンテナを開発し、物質の光励起・緩和過程の新しい制御手法を実証しました。本研究グループは独自に開発したシリコンナノ粒子について、①直径を数ナノメートルの精度で制御する技術と②磁気双極子発光体を表面に付加する技術を開発し、10倍以上に増強された磁気双極子遷移発光を実現しました。
本成果は、これまで考慮されなかった光励起・緩和過程を可能にする新しい技術であり、今後、光の磁場成分を活用した新しい光化学反応経路の開拓につながると期待されます。この研究成果は、2021年5月17日に、国際科学誌「ACS Photonics」に掲載されます。
本研究は、科学技術振興機構(JST)戦略的創造研究推進事業 さきがけ「電子やイオン等の能動的制御と反応」研究領域(研究総括:関根 泰)における研究課題「Mie共鳴による磁場増強を利用した光化学反応プラットフォームの構築」(研究者:杉本 泰)の支援を受けて行われました。
<プレスリリース資料>
- 本文 PDF(642KB)
<論文タイトル>
- “Magnetic Purcell Enhancement by Magnetic Quadrupole Resonance of Dielectric Nanosphere Antenna”
- DOI:10.1021/acsphotonics.1c00375
<お問い合わせ先>
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杉本 泰(スギモト ヒロシ)
神戸大学 大学院工学研究科 電気電子工学専攻 助教
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