ポイント
- 大腸菌ゲノムを3つの100万塩基対からなる環状DNAに分割した状態で保持させることに成功した。
- 分割ゲノムを大腸菌から取り出して、別の大腸菌に移植する技術を開発した。
- 人工合成した分割ゲノムを移植し、有用な機能がデザインされた人工大腸菌を構築するといった、合成生物学での展開が期待される。
JST 戦略的創造研究推進事業において、立教大学 理学部の向井 崇人 助教、末次 正幸 教授らの研究グループは、大腸菌ゲノムの分割と移植(インストール)技術を開発しました。
大腸菌ゲノムは460万塩基対の1つの環状DNAからなり、大腸菌から取り出して操作したり、別の大腸菌に移植したりするには大き過ぎるという問題がありました。本研究では、大腸菌ゲノムを3分割して小さくすることに成功し(分割ゲノム1つ当たりのサイズは100万塩基対)、さらに分割ゲノムを大腸菌から取り出し、別の大腸菌にインストールする技術を開発しました。この成果は、ゲノムの複製・分配のメカニズム解明につながるだけでなく、生命の設計図であるゲノムを入れ換え、機能デザインされた生命を創り出す合成生物学のツールとしての利用が期待されます。
本研究成果は、2021年4月28日(英国時間)に英国科学誌「Nucleic Acids Research」のブレイクスルー・ペーパーとしてオンライン版で公開されました。
本成果は、以下の事業・研究領域・研究課題によって得られました。
戦略的創造研究推進事業 チーム型研究(CREST)
研究領域 | 「ゲノムスケールのDNA設計・合成による細胞制御技術の創出」 (研究総括:塩見 春彦 慶應義塾大学 医学部 教授) |
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研究課題名 | 「人工ゲノムのセルフリーOn chip合成とその起動」 |
研究代表者 | 末次 正幸(立教大学 理学部 教授) |
研究期間 | 平成30年10月~令和5年3月 |
本研究では、試験管内再構成技術および微細加工・操作技術を用いて「セルフリーOn chipゲノム合成技術」を開発、合成ゲノムを細胞に移植して起動させるところまでを評価し、「作って起動し評価する」サイクルを高速かつ低コストで回すことを目指します。 最終的に、開発したゲノム合成技術を使って、大腸菌ゲノムのミニマム化と、デフラグ化を進め、ゲノムを完全理解可能なレベルにまで単純化した「ミニマムプラットフォームセル」を構築します。
<プレスリリース資料>
- 本文 PDF(273KB)
<論文タイトル>
- “Grand scale genome manipulation via chromosome swapping in Escherichia coli programmed by three one megabase chromosomes”
(3種の100万塩基染色体からなる大腸菌を用いた染色体交換による大規模ゲノム操作) - DOI:10.1093/nar/gkab298
<お問い合わせ先>
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<研究に関すること>
末次 正幸(スエツグ マサユキ)
立教大学 理学部 教授
〒171-8501 東京都豊島区西池袋3-34-1
Tel:03-3985-2372
E-mail:suetsugurikkyo.ac.jp
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<JSTの事業に関すること>
保田 睦子(ヤスダ ムツコ)
科学技術振興機構 戦略研究推進部 ライフイノベーショングループ
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立教大学 総長室 広報課
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