ポイント
- これまでオートファジーは主にたんぱく質の分解機構として理解されてきたため、RNA分解の選択性やその生物学的意義は不明だった。
- 出芽酵母を用いてオートファジーによりメッセンジャーRNA(mRNA)が選択的に分解され、遺伝子発現を制御することを発見した。
- オートファジーによるRNA分解に関わる液胞内RNA分解酵素は哺乳動物にまで保存されており、今後選択的なmRNA分解と疾患との関連の解明が期待される。
東京工業大学 科学技術創成研究院 細胞制御工学研究センターの牧野 支保 研究員、川俣 朋子 助教、大隅 良典 栄誉教授および理化学研究所 開拓研究本部 岩崎RNAシステム生化学研究室の岩崎 信太郎 主任研究員らの研究グループは、たんぱく質の情報を担うメッセンジャーRNA(mRNA)がオートファジーによって選択的に分解されることを明らかにした。
オートファジーは自己の細胞構成成分を分解する機構で、代謝の恒常性維持に貢献している。これまでオートファジーは主にたんぱく質の分解機構として理解されてきたが、最近、遺伝情報を担う核酸(RNA)の分解も担うことが明らかになってきた。しかしRNA分解の選択性やその生物学的意義は不明だった。
本研究ではオートファジーによって分解されるmRNAに選択性があることを発見した。また分解されやすいmRNAは、mRNAの情報をたんぱく質に変換するリボソームとの結合をオートファジー誘導後に維持していることが明らかとなった。本研究によりオートファジーがリボソームと結合したmRNAを選択的に分解することで、遺伝子の発現に関わるという新たな現象を発見した。
研究成果は英国科学誌「Nature Communications」で4月19日(現地時間)に公開される。
本研究は、日本学術振興会(JSPS) 科学研究費補助金 基盤研究(S)「オートファジーの生理機能の統合的理解(研究代表者:大隅 良典)」、同若手研究(B)「オートファジーによるRNA分解の分子機構と生理的意義の解明(研究代表者:牧野 支保)」、科学技術振興機構(JST) 戦略的創造研究推進事業 ACT-X「オートファジーによる選択的mRNA分解機構の解明」(研究者:牧野 支保、JPMJAX201E)」、文部科学省(MEXT) 科学研究費補助金 学術変革領域研究(B)「新規Disome-Seq法:パラメトリックなリボソーム渋滞の網羅的探索(研究代表者:岩崎 信太郎)」、同新学術領域研究「液胞/リソソームにおける核酸分解過程の生理生化学的解析(研究代表者:堀江 朋子)」による支援を受けて行われた。
<プレスリリース資料>
- 本文 PDF(419KB)
<論文タイトル>
- “Selectivity of mRNA degradation by autophagy in yeast”
- DOI:10.1038/s41467-021-22574-6
<お問い合わせ先>
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