大阪大学,科学技術振興機構(JST)

令和3年3月22日

大阪大学
科学技術振興機構(JST)

アンドロイドの表情に違和感が生じる要因候補を特定

~顔皮膚の大局的流れにおける人との違いが明らかに~

ポイント

大阪大学 大学院工学研究科の石原 尚 講師らの研究グループは、アンドロイドと人の間には、顔の上半部の皮膚の大局的な流れの複雑さにおいて顕著な差異があることを世界で初めて明らかにしました。

柔らかい連続面である人とアンドロイドの顔皮膚においては、まぶたを閉じる、あるいは眉を上げる、といった単純かつ局所的に思える運動であっても広範囲が連動し、大域的な3次元的流れが生じます。その流れは、皮膚および皮下の材質や構造に大きく依存して決まるため、表情筋あるいは表情機構が皮膚を駆動する向きだけからは予想がつきません。

これまで、アンドロイドの表情の人らしさは、主に心理印象や幾何学的特徴点の移動軌跡、あるいは皮膚表面の形状に注目して評価されるにとどまり、表情を形作る皮膚全面の流れの観点では評価されてきませんでした。

今回研究グループは、2体のアンドロイドおよび3人の成人男性の顔の右半面に100以上の位置計測用マーカを貼り付け、アンドロイドについては9および16種、成人男性については46種の顔動作に伴うマーカの3次元的な移動を計測し、大域的な流れの特徴を比較しました。そして、顔の上半部において、アンドロイドの皮膚の流れは概して直線的であるのに対し、人では曲線的であるという差異を明らかにしました。また、アンドロイドにおいては、皮膚が流れる先の皮膚が隆起し、流れる元が沈下するのに対し、人においては逆に、皮膚の流れる先が沈下し、流れる元が隆起する場合がある可能性を示唆する結果も得られました。これらの差異は、いまだ残るアンドロイド表情の違和感の要因となっている可能性があり、今後アンドロイドの表情機構に曲線的な皮膚の流れを生じさせる工夫や、表面の隆起陥没を制御する工夫を施すことによって、違和感なく効果的に感情を表現可能なアンドロイドの実現に近付けることが期待されます。

本研究成果は2021年3月22日(日本時間)、オンライン論文誌「Frontiers in Robotics and AI」に掲載されます。

本研究は、JST 戦略的創造研究推進事業 さきがけ 研究領域「新しい社会システムデザインに向けた情報基盤技術の創出」における研究課題「触れ合いデータを収集する子供アンドロイド高機能化」(研究者:石原 尚)の支援を受けて行われました。

<プレスリリース資料>

<論文タイトル>

“Comparison Between the Facial Flow Lines of Androids and Humans”
DOI:10.3389/frobt.2021.540193

<お問い合わせ先>

(英文)“Expressing some doubts about android faces”

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