筑波大学,北陸先端科学技術大学院大学,科学技術振興機構(JST)

令和3年3月18日

筑波大学
北陸先端科学技術大学院大学
科学技術振興機構(JST)

ダイヤモンドを用いた広帯域波長変換に成功

~新しい量子センシング技術の糸口に~

強い光と物質の相互作用に関する研究は、1960年にレーザーが開発されて以降、非線形光学分野として発展してきました。その中でも特に活発に研究されているのが高調波発生です。非線形光学結晶にレーザー光を照射した際に、その周波数の整数倍の光が放出される現象で、2倍の周波数の光が発生する場合を第二高調波発生、3倍の場合を第三高調波発生と呼びます。レーザー光の波長を変換する際などに用いられます。そして近年は、光共振器や光導波路などの光通信用技術としてダイヤモンド非線形光学が進展してきました。

本研究では、ダイヤモンドの表面近傍に窒素-空孔(NV)センターと呼ばれる欠陥を導入してダイヤモンド結晶の対称性を操作し、第二高調波、第三高調波発生など、広帯域の波長変換を行うことに成功しました。

この実験で波長変換の効率を評価したところ、第二高調波が第三高調波と同程度の高効率で生成されていました。その理由として、第二高調波がダイヤモンドの表面に極めて近い深さ約35ナノメートル(ナノメートルは10億分の1メートル)の領域で発生し、第三高調波の駆動力となっていることが明らかになりました。

また、このダイヤモンド中NVセンターの非線形光学効果により、波長1350~1600ナノメートルの赤外光が、波長450~800ナノメートルの可視~近赤外光にわたる広い帯域で波長変換でき、短い波長ほどその変換効率が高いことも判明しました。

ダイヤモンド中NVセンターによる第二高調波発生、すなわち電場振幅の2乗に比例する2次の非線形光学効果が可能となれば、ダイヤモンド結晶では今までできなかった電場による屈折率変調(電気-光学効果)なども可能となり、ダイヤモンド非線形光学の新領域を開拓できます。さらに、第二高調波発生や電気-光学効果などを利用した新しい量子センシングの開発への貢献も期待されます。

本成果は2021年3月18日(日本時間)、国際科学誌「ACS Photonics」に掲載されます。

本研究は、JST 戦略的創造研究推進事業 CREST「ダイヤモンドを用いた時空間極限量子センシング」(研究代表者:長谷 宗明)による支援を受けて実施されました。

<プレスリリース資料>

<論文タイトル>

“Second-harmonic generation in bulk diamond based on inversion symmetry breaking by color centers”
(色中心による反転対称性の破れに基づくバルクダイヤモンドの第二高調波発生)
DOI:10.1021/acsphotonics.0c01806

<お問い合わせ先>

(英文)“Diamond Color Centers for Nonlinear Photonics”

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