京都大学,九州大学,高輝度光科学研究センター,科学技術振興機構(JST)

令和3年2月17日

京都大学
九州大学
高輝度光科学研究センター
科学技術振興機構(JST)

超高効率な水の電気分解を実現するナノシート状合金触媒を開発

~再生可能エネルギーによる水素社会実現へ大きく貢献~

京都大学 大学院理学研究科 北川 宏 教授、草田 康平 同 特定助教(研究当時、現:京都大学 白眉センター 特定准教授)、呉 冬霜 同 特定研究員らの研究グループは、高活性かつ高耐久性を有する水電解触媒の開発に成功しました。

水電解技術は電力エネルギーにより水を分解して化学エネルギーである水素を製造するプロセスであり、特に欧米では再生可能エネルギーを利用した水素製造によりCO排出量ゼロ実現へ大きく貢献する技術として大きな注目を得ています。北川教授らの研究グループは、酸性溶液中で水の完全分解を高活性に長時間促進するルテニウム-イリジウム(Ru-Ir)合金電極触媒の開発に成功しました。この触媒は特徴的な珊瑚形状をしたナノ構造体であり、3nm(3×10-9m)程度のRu-Ir合金ナノシートの集合体です。水電解はカソードでの水素発生反応(HER:Hydrogen Evolution Reaction)とアノードでの酸素発生反応(OER:Oxygen Evolution Reaction)の2つの半反応から構成され、HERは白金(Pt)、OERはIrで広く研究されています。一方、Ruも高いOER活性を有することが知られていますが、酸性溶液中では反応電位で著しく溶出し、急激に触媒活性が悪くなることが問題でした。本研究で開発した珊瑚形状をしたRu-Irナノ合金(RuIrナノコーラル)はHER、OER両反応に対して非常に高い活性を有することに加え、極めて高い耐久性をも示すことが分かり、従来のPtとIrO(酸化イリジウム)を使用した場合に比べ、低コストかつ高性能な水電解の実現に成功しました。

本成果は、2021年2月17日(英国時間)に国際学術誌「Nature Communications」にオンライン掲載されます。また、物質基本特許として「異方性ナノ構造体及びその製造方法並びに触媒(特願2017-249511)」を出願中(出願人:京都大学)です。

本研究はJST 戦略的創造研究推進事業 ACCEL「元素間融合を基軸とする物質開発と応用展開」(研究代表者:北川 宏、プログラムマネージャー:岡部 晃博、研究開発期間:平成27年8月~令和3年3月、JPMJAC1501)、一部はJSPS 科学研究費助成事業 特別推進研究「非平衡合成による多元素ナノ合金の創製」(研究代表者:北川 宏、研究開発期間:令和2年8月~令和7年3月)、文部科学省 ナノテクノロジープラットフォーム事業の九州大学超顕微解析研究センター「微細構造解析プラットフォーム」の支援を受けて実施しました。

<プレスリリース資料>

<論文タイトル>

“Efficient overall water splitting in acid with anisotropic metal nanosheets”
(異方性金属ナノシートを用いた酸性溶液中での効率的な水の完全分解)
DOI:10.1038/s41467-021-20956-4

<お問い合わせ先>

(英文)“Efficient overall water splitting in acid with anisotropic metal nanosheets”

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