物質・材料研究機構(NIMS),科学技術振興機構(JST),内閣府 政策統括官(科学技術・イノベーション担当)

令和2年12月22日

物質・材料研究機構(NIMS)
科学技術振興機構(JST)
内閣府 政策統括官(科学技術・イノベーション担当)

SIP研究成果を社会実装するための
マテリアルズインテグレーションコンソーシアム発足

内閣府 戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)の第1期「革新的構造材料」および第2期「統合型材料開発システムによるマテリアル革命」の施策として、構造材料開発のコストと時間を大幅に低減する技術の開発が行われてきました。この中で開発されているマテリアルズインテグレーションシステム(MIntシステム)を基盤として、NIMSは日本の部素材産業の競争力強化に貢献するための産学官連携組織「マテリアルズインテグレーションコンソーシアム(MIコンソ)」を発足させ、会員募集を開始しました。MIntシステムは、人工知能(AI)を含む情報工学を活用し、プロセスから構造、特性を経て、性能までを一気通貫に予測することで、欲しい性能から最適な材料・プロセスを素早く提案できるようにするシステムです。最大の特長は最新の研究成果を取り入れながら進化することにあり、MIコンソ会員間の共同研究成果を蓄積して、MIntシステムを常に最先端の材料開発ツールとして進化させながら、個々の会員の研究開発力の向上に貢献していくことを目指します。

材料開発における期間・コストの大幅な削減に向けてAIの活用が期待されるなど、材料開発手法が大変革期を迎えています。諸外国でも投資が活発化する中、我が国の部素材産業の高い競争力を強化すべく、SIPにおいて「マテリアルズインテグレーション」という材料工学のデジタル化に向けた概念を提唱し、金属系構造材料を主な対象としたMIntシステムを、NIMSおよび東京大学を中核とした産学官連携によるオールジャパン体制によって開発してきました。

MIntシステムでは、金属系構造材料のさまざまな課題について、AIや材料工学理論・経験則に基づくモジュールと呼ばれるさまざまな計算ツールを自在に接続し、プロセスから構造、特性、性能までを一気通貫に予測することができます。さらに、AIによる最適化手法と組み合わせることで、欲しい性能からプロセスや化学成分を最適化することも可能としています。例えば、火力発電所で使用される耐熱鋼の溶接部材について、高温高圧力下で使用する際の破断寿命を高い精度で推定することが可能となっており、何千時間もかかる実験を数時間の計算で代替しながら最適な溶接施工条件を見いだすことができます。欧米でも材料開発向け計算ツールの開発が進められていますが、さまざまな計算ツールをモジュールとして自在に接続して複雑な材料課題に対応するシステムはこのMIntシステムが初めてです。

MIntシステムを社会実装する仕組みとして、12月1日にMIコンソを設置し、SIP参画機関を中心に、当初会員として企業会員4社、アカデミア会員15組織(大学・公的研究機関の研究室・センターなど)にて発足することとなりました。さらに、広く会員募集も開始します。企業会員には利用料(年間250万円税別)をご負担いただく一方、アカデミア会員は利用料を免除しMIntシステムの高度化に貢献いただくことになっています。

MIコンソでは産学官の共同研究によるMIntシステムの利活用によって材料イノベーションを促進します。同時に、共同研究から生まれた最新の成果のうち材料開発ツールとして役立つものをモジュールなどとしてMIntシステムに取り込むことで、扱える問題の種類を増やし、ツールとしての先端性を常に確保します。このように、個々の企業の研究開発を飛躍的に効率化しながら、共用できる成果をMIntシステムに蓄積することで我が国全体の部素材産業の競争力強化に寄与する、独自の産学官連携プラットフォームを目指します。

本研究は内閣府 戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)の一環として実施されました。

「統合型材料開発システムによるマテリアル革命」(管理法人:科学技術振興機構)
「先端的構造材料・プロセスに対応した逆問題MI基盤の構築」
出村 雅彦(物質・材料研究機構 統合型材料開発・情報基盤部門 部門長)

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