ポイント
- 機械学習により粉末X線回折パターンから結晶の対称性を予測する手法を開発。
- 機械学習モデルの解析により、熟練者が経験を通して習得した勘やコツなどの経験的知識を定式化することに成功。
- 研究者間で漠然と共有されている経験的知識を、計測データの中から発見し定式化することが可能となり科学研究の加速が期待される。
高エネルギー加速器研究機構(KEK) 物質構造科学研究所 量子ビーム連携研究センターの小野 寛太 准教授、総合研究大学院大学 高エネルギー加速器科学研究科 鈴木 雄太(博士後期課程2年)らの研究グループは、統計数理研究所、東京理科大学と共同で、物質・材料の構造評価に不可欠な計測データである粉末X線回折パターンから機械学習を用いて結晶の対称性を予測する手法を開発しました。
さらに機械学習モデルの解析を通じて、これまで明示されていなかった「粉末X線回折パターンを見ただけでおおよその対称性を推定できる熟練者の経験知」を定式化することに成功しました。この研究で用いた解釈可能な機械学習アプローチにより、熟練者の勘・コツのように研究者間で漠然と共有されていた経験的知識を、計測データの中から発見し定式化することが可能となります。それにより、定式化された知識を用いて誰でも熟練者並みの計測データ解析を効率的に行えるようになり、科学研究を加速することが期待されます。
この研究成果は、国際科学誌「Scientific Reports」に2020年12月11日(英国時間)オンライン掲載予定です。
本研究はJST 未来社会創造事業 探索加速型「共通基盤」領域の研究開発課題「数理科学を活用したマルチスケール・マルチモーダル構造解析システム(研究開発代表者:小野 寛太)」(JPMJMI19G1)で実施されました。また、本研究の一部は、JST 戦略的創造研究推進事業 ACT-I研究領域「情報と未来」の研究課題「物質の結晶構造を高速に予測するデータ解析技術の開発(研究者:鈴木 雄太)」(JPMJPR18UE)により行いました。
<プレスリリース資料>
- 本文 PDF(399KB)
<論文タイトル>
- “Symmetry prediction and knowledge discovery from X-ray diffraction patterns using an interpretable machine learning approach”
- DOI:10.1038/s41598-020-77474-4
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