ポイント
- 岡山大学と理化学研究所が参加した国際研究グループは、最新の塩基解読法および整列技術によって20品種のオオムギにおける染色体単位のゲノム配列解析に成功しました。
- 品種間で遺伝子領域配列の63パーセントが共通で、残りの37パーセントは異なることが分かりました。
- 本成果によりオオムギのデジタル育種が進み、品種をデザインする技術の開発が期待されます。
岡山大学 資源植物科学研究所の佐藤 和広 教授、平山 隆志 教授、理化学研究所 環境資源科学研究センターの持田 恵一 チームリーダー(岡山大学 資源植物科学研究所 特任教授)らの共同研究グループは、2万種類以上のオオムギから、ゲノムの部分配列による遺伝子鑑定で選んだ20品種を、最新の塩基解読法および整列技術で個別に解読し、世界中のオオムギに含まれるDNA配列の大要を明らかにしました。
オオムギは7対の染色体を持ち、そのゲノム配列は約50億塩基対と巨大で、ヒトの1.7倍、イネの13倍もあります。オオムギでは、これまで単一の品種の精密な塩基配列を基に、別な品種の配列を重ねることで、遺伝子同定や遺伝子鑑定技術の開発をしていました。しかし、この方法では、目的とする品種の遺伝子配列が元の品種になければ、解析することは困難でした。
このため、本研究グループは20種類の野生および栽培オオムギを個別に高精度解読して、オオムギのDNA配列の大要を得る「パンゲノム(Pan Genome)」解析を行いました。その結果、品種間で遺伝子領域配列の63パーセントが共通で、残りの37パーセントは異なることが分かりました。また、この解析から、過去の育種の過程で起きたゲノム構造の逆位を確認しました。
本研究での複数品種の高精度解読によって、有用形質に関わる遺伝子の解析や育種への応用が可能となるほか、本研究の進展によって、オオムギのデジタル育種が可能となり、目的とする品種をデザインする技術の開発が期待されます。
この研究成果は、2020年11月26日(日本時間)に国際科学誌「Nature」オンライン版に掲載されます。
本研究は、JST 未来社会創造事業 重点公募テーマ「「ゲームチェンジングテクノロジー」による低炭素社会の実現」における研究開発課題名「超開花性による高バイオマス雑種オオムギ育種法の開発」(研究開発代表者:佐藤 和広)およびJST 戦略的創造研究推進事業 CREST「環境変動に対する植物の頑健性の解明と応用に向けた基盤技術の創出」研究領域における研究課題名「データ科学に基づく作物設計基盤技術の構築」(研究代表者:平山 隆志)の支援を受けて実施しました。
<プレスリリース資料>
- 本文 PDF(457KB)
<論文タイトル>
- “The barley pan-genome reveals the hidden legacy of mutation breeding”
(オオムギのパンゲノムは育種の隠れた過去の出来事を明らかにする) - DOI:10.1038/s41586-020-2947-8
<お問い合わせ先>
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<研究に関すること>
佐藤 和広(サトウ カズヒロ)
岡山大学 資源植物科学研究所 教授
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E-mail:kazsatookayama-u.ac.jp -
<JST事業に関すること>
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Tel:03-3512-3543
E-mail:alcajst.go.jp -
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