理化学研究所,東京大学,科学技術振興機構(JST)

令和2年11月23日

理化学研究所
東京大学
科学技術振興機構(JST)

伝導電子に浮かび上がる磁気構造

~ナノスケールの磁気渦構造をなす新機構への手がかり~

理化学研究所(理研) 創発物性科学研究センター 創発物性計測研究チームの安井 勇気 特別研究員、クリストファー・バトラー 基礎科学特別研究員、花栗 哲郎 チームリーダー、強相関量子構造研究チームのヌイェン・ドゥイ・カーン 特別研究員(研究当時)、東京大学 大学院工学系研究科 物理工学専攻の速水 賢 講師、関 真一郎 准教授らの共同研究グループは、ナノメートル(nm、1nmは10億分の1メートル)サイズの磁気渦構造が伝導電子に現れることを発見しました。

本研究成果は、空間反転対称性のある物質における磁気渦構造の新たな機構の解明に貢献すると期待できます。

磁気渦構造を実現させるには空間反転対称性の破れが必要であると考えられてきましたが、2019年にこの常識が覆され、空間反転対称性のある物質において磁気渦構造が観測されました。

今回、共同研究グループは、走査型トンネル顕微鏡/分光法(STM/STS)を用いて、空間反転対称性のある希土類合金GdRuSi(Gd:ガドリニウム、Ru:ルテニウム、Si:ケイ素)において、局在電子が生み出す磁気渦構造が伝導電子に影響を与えていることを明らかにしました。これは、空間反転対称のある物質における磁気渦構造の実現に伝導電子が寄与していることに、初めて実験的な知見を与えるものです。

本研究は、オンライン科学雑誌「Nature Communications」(11月23日付:日本時間11月23日)に掲載されます。

本研究は、科学技術振興機構(JST) 戦略的創造研究推進事業 CREST「トポロジカル量子計算の基盤技術構築(研究代表者:笹川 崇男)」、「トポロジカル機能界面の創出(研究代表者:塚崎 敦)」、「ナノスピン構造を用いた電子量子位相制御ナノスピン構造を用いた電子量子位相制御(研究代表者:永長 直人)」、日本学術振興会(JSPS) 科学研究費補助金新学術領域研究(研究領域提案型)「量子液晶の物性科学(領域代表者:芝内 孝禎)」、同若手研究「遍歴磁性体におけるカイラル磁気秩序相の起源解明と特異な磁気・非相反伝導の探求(研究代表者:速水 賢)」、同基盤研究(A)「X線磁気トモグラフィー法を用いた3次元ナノ磁区構造観察による磁性機能の解明(研究代表者:鈴木 基寛)」、同基盤研究(A)「磁気構造のトポロジー・対称性に由来した新しいマグノン・熱輸送現象の開拓(研究代表者:関 真一郎)」、JST 戦略的創造研究推進事業 さきがけ「磁気構造と電子構造のトポロジーを利用した巨大創発電磁場の生成と制御(研究者:関 真一郎)」、公益財団法人旭硝子財団による支援を受けて行われました。

<プレスリリース資料>

<論文タイトル>

“Imaging the coupling between itinerant electrons and localised moments in the centrosymmetric skyrmion magnet GdRu2Si2
DOI:10.1038/s41467-020-19751-4

<お問い合わせ先>

(英文)“Imaging the coupling between itinerant electrons and localised moments in the centrosymmetric skyrmion magnet GdRu2Si2”

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