ポイント
- 機械学習と定常動作を繰り返す機械を組み合わせ、自律的に新規物質を探索するロボットシステムを開発。
- 二酸化チタン薄膜の電気抵抗最小化に成功、従来の10倍の実験効率を達成。
- ロボットシステムと人が協働した、全自動で自律的な研究スタイルを提唱。
東京工業大学 物質理工学院 応用化学系の清水 亮太 准教授、小林 成 大学院生(博士課程2年)と一杉 太郎 教授らは、産業技術総合研究所の安藤 康伸 主任研究員らと共同で、機械学習と定常動作を繰り返す機械を融合した自律的な物質探索ロボットシステムの開発に成功した。
化学や素材、自動車、エレクトロニクス産業などにおいて、新物質・材料研究スピードの向上が急務である。また、現在のコロナ禍を契機に、遠隔操作により実験を進める重要性がますます高まっている。本研究成果は研究スピード向上と遠隔操作を実現するものであり、「研究開発の進め方を改革する」ことが狙いである。
従来の物質研究では、目的とする物質を1つずつ丁寧に作製し、合成条件の最適化も人間が行っており、研究スピードには限界があった。そこで、本研究では機械学習と定常動作を繰り返す機械を応用した。具体的には、合成条件最適化を行う機械学習と、物質合成と電気抵抗評価を全自動で行う機械を統合し、全自動かつ自律的に薄膜合成を行う物質探索ロボットシステムを開発した。これにより、人間が介在することなく、自律的に二酸化チタン薄膜の電気抵抗を最小化することに成功した。本研究は無機固体物質用として世界で初めてのシステムである。
以上により研究スピードを格段に向上させるとともに、研究者は単純作業の繰り返しから解放され、より創造的な研究活動に従事することが可能になる。そして、合成条件とさまざまな物性値をセットとした物質ビッグデータを活用することにより、研究の進め方に変革をもたらし、我が国の産業競争力向上に貢献することが期待される。
研究成果は2020年11月18日(米国東部時間)、米国物理学協会誌「APL Materials」に「Perspective」としてオンライン掲載される。
本成果はJST 戦略的創造研究推進事業(CREST、さきがけ)および未来社会創造事業 共通基盤領域、日本学術振興会(JSPS)科研費の支援を受けて行った。
<プレスリリース資料>
- 本文 PDF(546KB)
<論文タイトル>
- “Autonomous materials synthesis by machine learning and robotics”
- DOI:10.1063/5.0020370
<お問い合わせ先>
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東京工業大学 物質理工学院 応用化学系 教授
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