豊田工業大学(名古屋市天白区 学長:保立 和夫)の藤 貴夫 教授は、フィラメンテーション法という独自の技術によって、波長の半周期よりも短い時間幅をもった極限的に短いパルスを発生させることに成功しました。
短い時間幅をもった光のパルスを発生するレーザーによって、瞬間的に強い光が得られます。そのような光を使ったさまざまな応用が展開されており、現在、パルスレーザーは、広い分野で利用されています。パルス幅が短くなれば、それだけ短い時間に光を集めることができるため、瞬間的により強い光が得られることになります。その光パルスの幅がどこまで短くできるかということを考えたときに、光は波の性質をもっているので、その波長の周期よりもパルス幅を短くすることは、極めて困難ということがわかります。
豊田工業大学の藤教授らは、フィラメンテーション法という独自の技術によって、波長の半周期よりも短い時間幅をもった極限的に短いパルスを発生させることに成功しました。フィラメンテーションによる短パルス発生法は、藤教授が2007年に発見した方法ですが、フィラメンテーションの最適化を行うことによって、光の周期の半分以下である0.4周期の幅をもったサブ半サイクルパルスを発生することができました。このようなパルス電場は、位相が変化することで、光電場の形の対称性が明確に変わります。そのような対称性の操作も簡単に行うことができることを示しました。また、この光電場の位相が長時間安定性していることも示しました。
この光源によって、光電場の対称性に敏感な現象について研究を行うことができます。また、この光は、波長領域が中赤外領域であり、分子の振動準位と共鳴しています。そのことを使って、脳の病気の原因と考えられている物質の形成過程や分布の特徴を観測することを目指しています。
本成果は、2020年11月23日(米国東部時間)に米国科学誌「Optics Express」に掲載される予定です。
本研究は、科学技術振興機構(JST) 戦略的創造研究推進事業 CREST(JPMJCR17N5)及び日本学術振興会(JSPS) 科研費基盤B(17H02801)の支援を受けて行われました。
<プレスリリース資料>
- 本文 PDF(783KB)
<論文タイトル>
- “Generation of sub-half-cycle 10 µm pulses through filamentation at kilohertz repetition rates”
- DOI:10.1364/OE.408342
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