微細藻類は機能性食品や代替燃料などに広く利用されていくことが期待されています。しかしながら、微細藻類を容易に増やすための「屋外開放培養」は、藻類を捕食する微生物など他生物の混入増殖が問題となり、限られた種類の淡水産藻類でしか成功していません。一方で、淡水はこれから不足することが予測され、淡水産藻類の培養には様々な制約が生じるため、豊富にある海水による淡水産藻類の培養が望まれています。
本成果では、淡水産藻類である単細胞紅藻「イデユコゴメ類」の塩耐性を強化する培養法を開発し、酸性化させた天然海水を用いた「屋外開放培養」に成功しました。高塩濃度、酸性下では他生物が混入増殖できないので、本培養系では酸性を好むイデユコゴメ類を高塩濃度に馴化させ、高い塩濃度である天然海水を酸性化させた培養液を用いることで、微生物の混入増殖を抑制できるようにしました。
本研究で使用したイデユコゴメ類は、他の微細藻類に比べて高密度まで増殖し、タンパク質および各種ビタミンの含有量が高く、それらの栄養成分の不足が問題となっている水産飼料などとしての利用が期待されています。また、遺伝的改変によりDNAワクチン含有飼料などとしての利用も期待されます。
本研究は、情報・システム機構 国立遺伝学研究所の廣岡 俊亮 特任助教、宮城島 進也 教授、広島商船高等専門学校の大沼 みお 准教授、日本女子大学 理学部の黒岩 常祥 客員研究員(東京大学 名誉教授)による共同研究グループによって実施されました。
本研究の成果は、2020年8月24日(英国時間)に英国科学雑誌「Scientific Reports」に掲載されます。
本研究は、情報・システム研究機構 国立遺伝学研究所 共生細胞進化研究室が中心となり、広島商船高等専門学校、日本女子大学 理学部との共同研究で行われました。
本研究は、科学技術振興機構(JST) 未来社会創造事業 探索加速型「地球規模課題である低炭素社会の実現」領域における研究開発課題「弱酸性化海水を用いた微細藻類培養系及び利用系の構築」(研究代表者:宮城島 進也)の支援を受けて行われました。
<プレスリリース資料>
- 本文 PDF(565KB)
<論文タイトル>
- “Efficient open cultivation of cyanidialean red algae in acidified seawater”
(海水を用いた単細胞紅藻イデユコゴメ類の屋外培養) - DOI:10.1038/s41598-020-70398-z
<お問い合わせ先>
-
<研究に関すること>
宮城島 進也(ミヤギシマ シンヤ)
国立遺伝学研究所 共生細胞進化研究室 教授
Tel:055-981-9411
E-mail:smiyagisnig.ac.jp -
<知財に関すること>
鈴木 睦昭(スズキ ムツアキ)
国立遺伝学研究所 産学連携・知的財産室 室長
Tel:055-981-5831
E-mail:msuzukinig.ac.jp -
<JST事業に関すること>
大矢 克(オオヤ マサル)
科学技術振興機構 未来創造研究開発推進部
Tel:03-3512-3543
E-mail:alcajst.go.jp -
<報道担当>
国立遺伝学研究所 リサーチ・アドミニストレーター室 広報チーム
Tel:055-981-5873
E-mail:infokohonig.ac.jp科学技術振興機構 広報課
〒102-8666 東京都千代田区四番町5番地3
Tel:03-5214-8404
E-mail:jstkohojst.go.jp