富山大学,科学技術振興機構(JST)

令和2年8月14日

富山大学
科学技術振興機構(JST)

世界初、自己触媒機能付き金属触媒反応器を3Dプリント技術で作製

~高温・高圧反応可能、プラントを劇的に小型化~

富山大学 学術研究部工学系 椿 範立 教授らは、レーザー加工と3Dプリンターを用いて、高温・高圧の過酷な条件下でも使用可能な「自己触媒機能付き金属触媒反応器」の作製に世界で初めて成功しました。

多くの化学工業プラントには多量の担持触媒を充填した高温・高圧型の大型反応器が用いられていますが、触媒・設備の低コスト化、小型化、省エネルギー化に向けて、反応プロセスや設備の革新が求められています。椿教授が率いる研究グループは、レーザー溶融噴射技術を用いた高融点金属の3Dプリント技術を活用し、精密にコントロールされた微細構造を有する金属反応器の作製に成功しました。次いで、内面を化学処理することにより微細金属表面に触媒機能を付与し、「自己触媒機能付き金属触媒反応器」の創出に至りました。この反応器は、従来の触媒反応器と同様、高温・高圧条件下でも使用可能です。

この技術を用いると、反応管内にかさ高い担持触媒を充填する必要がなくなり、多くの触媒反応器を小型化でき、設備投資・触媒コストの低減につながります。さらに、プラント自体を劇的にコンパクト化することで、従来技術ではスペース的に難しかった洋上生産・車両・船舶上での生産にも展開できます。

応用反応例として、二酸化炭素の水素化から液体炭化水素燃料の合成、メタンと二酸化炭素の改質反応などの高温・高圧条件下での反応において、高い活性と長い触媒寿命を実証しました。また、日本が世界をリードしている海底メタンハイドレートの利用において、洋上液体合成燃料の高速生産を含め、幅広い応用範囲が期待できます。なお、本技術は富山大学らによって特許出願されました(出願番号:特願2020-93320)。

本研究は、物質・材料研究機構(NIMS) 彭 小波 研究員、富山大学 楊 国輝 准教授と共同で行ったものです。

本研究成果は、2020年8月14日(英国時間)に英国科学誌「Nature Communications」のオンライン速報版で公開されます。

本研究成果は、科学技術振興機構(JST) 未来社会創造事業 探索加速型「地球規模課題である低炭素社会の実現」領域(運営総括:橋本 和仁)の研究開発課題「二酸化炭素からの新しいGas-to-Liquid触媒技術(研究開発代表者:椿 範立)」の一環として行われました。

<プレスリリース資料>

<論文タイトル>

“Metal 3D Printing Technology for Functional Integration of Catalytic System”
(触媒システムの機能集積を実現する金属3Dプリント技術)
DOI:10.1038/s41467-020-17941-8

<お問い合わせ先>

(英文)“Metal 3D printing technology for functional integration of catalytic system”

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