京都大学,科学技術振興機構(JST)

令和2年8月3日

京都大学
科学技術振興機構(JST)

白金族ハイエントロピー合金ナノ触媒の合成に成功

~“One for all,all for one”の6銃士触媒が高難度反応を達成~

京都大学 大学院理学研究科 北川 宏 教授、草田 康平 同特定助教、Dongshuang Wu 同特定研究員らの研究グループは、白金族元素(Platinum Group Metals:PGMs)である6元素(白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)、イリジウム(Ir)、ルテニウム(Ru)、オスミウム(Os))を全て原子レベルで均一に混ぜ合わせたハイエントロピー合金(HEA)ナノ粒子(PGM-HEA)の合成に成功しました。さらに、PGM-HEAナノ粒子はエタノール酸化反応電極触媒として、既報の触媒と比較して記録的に高い活性を示すだけでなく、従来の単純な金属触媒では達成できなかった12電子完全酸化反応が進行していることを明らかにしました。この反応は多様な反応中間体が存在し、12個の電子とプロトンが関与する極めて複雑な反応ですが、PGM-HEAは各構成元素それぞれが特異な素反応に対して高活性を示す白金族であり、かつそれらが原子レベルで混合することで粒子表面に多彩な吸着サイトを有するため、複雑な反応の各素反応を協奏的に促進させたものと考えられます。この結果は、従来の金属触媒では達成できなかったその他の高難度反応に対しても、ハイエントロピー合金触媒が高活性をもつ可能性を示しています。

本成果は、2020年7月29日(米国東部時間)に米国の国際学術誌「Journal of the American Chemical Society」にオンライン掲載されました。

本研究は、科学技術振興機構(JST) 戦略的創造研究推進事業 ACCEL「元素間融合を基軸とする物質開発と応用展開」(研究代表者:北川 宏、プログラムマネージャー:岡部 晃博、研究開発期間:平成27年8月~令和3年3月、JPMJAC1501)、一部は新学術領域研究「ハイエントロピー合金:元素の多様性と不均一性に基づく新しい材料の学理」(研究代表者:乾 晴行、研究開発期間:平成30年6月~令和5年3月)、文部科学省のナノテクノロジープラットフォーム事業の九州大学 超顕微解析研究センター「微細構造解析プラットフォーム」の支援を受けて実施しました。

<プレスリリース資料>

<論文タイトル>

“Platinum-Group-Metal High-Entropy-Alloy Nanoparticles”
(白金族ハイエントロピー合金ナノ粒子)
DOI:10.1021/jacs.0c04807

<お問い合わせ先>

(英文)“Going platinum at nanoscale”

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