理化学研究所,科学技術振興機構(JST)

令和2年7月8日

理化学研究所
科学技術振興機構(JST)

サブサイクル光を増幅する新手法の開発

~波長の壁を破る極超短パルスレーザー光~

理化学研究所(理研) 光量子工学研究センター アト秒科学研究チームのリン・ユーチー 研究員、鍋川 康夫 専任研究員、緑川 克美 チームリーダーの研究チームは、一波長励起の増幅器を用いて、「サブサイクル光」と呼ばれる光電場が振動する周期よりも短い時間幅の極超短パルスレーザー光を簡便に増幅する新たな手法を開発しました。

本研究成果は、化学反応における電子の動きや強い光電場下での固体の状態変化など、物質の超高速応答を観測・制御する有力な手段を提供するものと期待できます。

サブサイクル光を増幅するには、1オクターブ以上の光周波数帯域での利得(入力に対する出力比)が必要です。しかし、従来の光学パラメトリック増幅(OPA)では、ここまで広い利得周波数帯域幅を得られませんでした。

今回、研究チームは、非線形光学結晶BBOを用いたOPAにおいて、励起光の波長を708ナノメートル(1ナノメートルは10億分の1メートル)にすることで、利得周波数帯域幅を1オクターブ以上に広げることに成功しました。増幅した広帯域光を周波数に応じて重ね合わせる(分散補償)ために、波長分割と合成のための干渉計を2つの分散制御装置と組み合わせました。その結果、光周波数130~300テラヘルツ(波長0.9~2.4マイクロメートル:1マイクロメートルは100万分の1メートル)にわたる短波長赤外領域のレーザー光の増幅と分散制御が可能になりました。パルス幅が4.3フェムト秒(1フェムト秒は1000兆分の1秒)であることから、得られた出力光がサブサイクル光であることを確認しました。

本研究は、オンライン科学雑誌「Nature Communications」(2020年7月8日付:日本時間7月8日)に掲載されます。

本研究は、JST 戦略的創造研究推進事業 CREST 研究領域「新たな光機能や光物性の発現・利活用を基軸とする次世代フォトニクスの基盤技術(研究総括:北山 研一)」の研究課題「アト秒反応ダイナミクスコントローラーの創生(研究代表者:石川 顕一)」による支援を受けて行われました。

<プレスリリース資料>

<論文タイトル>

“Optical parametric amplification of sub-cycle shortwave infrared pulses”
DOI:10.1038/s41467-020-17247-9

<お問い合わせ先>

(英文)“Optical parametric amplification of sub-cycle shortwave infrared pulses”

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