科学技術振興機構(JST),KAICO株式会社

令和2年5月25日

科学技術振興機構(JST)
KAICO株式会社

出資型新事業創出支援プログラム(SUCCESS)における
KAICO株式会社への出資決定について

JST(理事長 濵口 道成)は、出資型新事業創出支援プログラム(SUCCESS)において、KAICO株式会社(本社:福岡県、代表取締役 大和 建太、以下「KAICO」という)からの第三者割当増資の引き受けを実施しました。

KAICOは、目的たんぱく質の遺伝子コードを搭載したバキュロウイルスを昆虫のカイコに感染させ、難発現性のたんぱく質を高効率に開発・生産する九州大学発のベンチャー企業です。JSTの大学発新産業創出プログラム(START)の平成27年度採択課題「オンリーワンカイコバイオリソースと昆虫工場を用いた難発現性タンパク質の大量生産システム」での研究開発成果を基に平成30年4月に設立されました。

バキュロウイルスは主にチョウやガなど鱗翅(りんし)目の昆虫に種特異的に感染するウイルスでヒトには感染しないため、生物農薬としても利用されています。九州大学ではSTARTのプロジェクトによってカイコの体内でたんぱく質を高効率に発現できる組み換えバキュロウイルスを開発しました。目的とするたんぱく質の遺伝子コードが特定できていれば短期間でこの組み換えバキュロウイルスに搭載することが可能です。この組み換えバキュロウイルスの技術と、同じく九州大学でおよそ100年にわたって系統を維持している近交系のカイコ約450系統の中から特にウイルス感受性の高い(ウイルスに感染しやすい)カイコの系統とを組み合わせることで難発現性のたんぱく質を短期間で高効率に産生できるようになりました。

KAICOは九州大学からこれらの技術シーズについて技術移転およびライセンスを受け、平成30年4月の設立以降、主に再生医療用サイトカインなど10種以上を研究用たんぱく質試薬としてすでに上市しており、複数のウイルスについてワクチンの原料となり得るウイルス様粒子(VLP)を作製しています。

さらに九州大学と共同で、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の組み換えウイルス抗原(抗原Sプロテイン三量体)と組み換え抗ウイルス抗体の開発に成功しました。抗原Sプロテインについては複数の抗体との結合も確認し、パートナー企業と抗体検査キットの開発に着手しています。今後ワクチンへの展開も目指して量産体制を確立し、共同で開発に取り組む製薬企業を探索していく予定です。

KAICOでは、短期間に高効率で難発現性たんぱく質を発現できる特徴を生かし、たんぱく質の発現を受託するサービスや、発現したたんぱく質を試薬、診断薬、医薬品原料として研究機関や製薬企業に提供していくことで健康社会の実現へ寄与していくことを目指します。

JSTは、先端技術を実用化し社会へ還元するため、平成26年4月より「出資型新事業創出支援プログラム」(SUCCESS:SUpport Program of Capital Contribution to Early-Stage CompanieS)を実施しています。

本事業は、JSTの研究開発成果の実用化を目指すベンチャー企業に対してJSTが出資し、JSTのネットワークを活用して人的・技術的援助を行うことで、その創出と成長を促進し、当該ベンチャー企業が行う事業活動を通じてJSTの研究開発成果の実用化・社会還元を促進することを目的としています。JSTが出資してベンチャー企業の株主になることで、民間の資金を誘引する「呼び水効果」も志向しています。

SUCCESSホームページURL:https://www.jst.go.jp/entre/

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