ポイント
- 180年以上前に血小板が発見されて以来、血小板凝集塊は見た目が酷似しており、区別がつかないと考えられていたが、高い識別能力を持つ人工知能を用いることで、血小板凝集塊が刺激物質(アゴニスト)により分類可能であることを世界で初めて発見した。
- 具体的には、特殊な顕微鏡により得られた多数の血小板および血小板凝集塊の画像をもとに深層学習を行い、それによって構築された人工知能を活用することで、アゴニストの種類により血小板凝集塊の形態(形、大きさ、複雑さなど)が微妙に違うことを発見し、血小板凝集塊の形態から活性化を誘導するアゴニストの種類の同定に成功した。
- 本手法は血小板凝集形成のメカニズムを解明するための強力なツールであることから、血小板生物学の新展開が期待され、また、流血中の血小板凝集塊の存在は心筋梗塞や脳梗塞などの血栓性疾患と関連があることから、血栓性疾患の画期的な臨床診断法、薬理学、治療法への応用展開が期待される。
東京大学 大学院理学系研究科の周 雨奇 大学院生、合田 圭介 教授らは東京大学 大学院医学系研究科・東京大学 医学部附属病院 検査部の安本 篤史 助教(研究当時)、矢冨 裕 教授と共同で、血液中の血小板凝集塊が分類できることを世界で初めて発見し、それを定量モデル化した手法「インテリジェント血小板凝集塊分類法(intelligent Platelet Aggregate Classifier:iPAC)」の開発に成功しました。iPACは、特殊な顕微鏡を用いて得られた多数の血小板および血小板凝集塊の画像をもとにした深層学習によって構築された人工知能です。iPACを用いることで、刺激物質(アゴニスト)の種類により血小板凝集塊の形態(形、大きさ、複雑さなど)が微妙に違うことに気づき、血小板凝集塊の形態から活性化を誘導するアゴニストの種類の同定・分類するという画期的な発見をしました。iPACは、血小板凝集のメカニズムを解明するための強力なツールであり、また、流血中の血小板凝集塊の存在は心筋梗塞や脳梗塞の原因となるアテローム血栓症および最近の新型コロナウイルス感染による血栓症と関連することから、血栓性疾患の画期的な臨床診断法、薬理学、治療法への応用展開が期待されます。
本研究成果は、2020年5月12日(英国夏時間)に「eLife」のオンライン版で公開される予定です。
本研究は、内閣府が主導する革新的研究開発推進プログラム(ImPACT)の研究開発プログラム「セレンディピティの計画的創出による新価値創造」(プログラム・マネージャー:合田 圭介)、日本学術振興会(JSPS)の研究拠点形成事業、ホワイトロック財団の支援を受けて実施されました。
<プレスリリース資料>
- 本文 PDF(712KB)
<論文タイトル>
- “Intelligent classification of platelet aggregates by agonist type”
- DOI:10.7554/eLife.52938
<お問い合わせ先>
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<研究に関すること>
合田 圭介(ゴウダ ケイスケ)
東京大学 大学院理学系研究科 化学専攻 教授
E-mail:godachem.s.u-tokyo.ac.jp
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<ImPACT事業に関すること>
内閣府 政策統括官(科学技術・イノベーション担当)付 未来革新研究推進担当
Tel:03-6257-1339
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<報道担当>
東京大学 大学院理学系研究科・理学部 広報室
E-mail:kouhou.s
gs.mail.u-tokyo.ac.jp
科学技術振興機構 広報課
〒102-8666 東京都千代田区四番町5番地3
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E-mail:jstkohojst.go.jp