早稲田大学,科学技術振興機構(JST)

令和2年3月13日

早稲田大学
科学技術振興機構(JST)

低温で化学反応が速く進む手法を世界で初めて発見

ポイント

早稲田大学 大学院先進理工学研究科博士2年の村上 洸太(ムラカミ コウタ) 氏および理工学術院の関根 泰(セキネ ヤスシ) 教授らの研究グループは、外部から固体触媒に電位を与えることで、低温で化学反応が速く進む手法を世界で初めて発見しました。これまで化学反応は高温ほど速く進むというアレニウスの法則が一般的でしたが、その法則を打ち破る新しい概念です。

本研究成果は、2020年3月13日(英国時間)にイギリス王立化学会のジャーナル「Chemical Communications」のオンライン版で公開されます。

本成果は、JST 未来社会創造事業 研究課題名「電場中での低温オンデマンド省エネルギーアンモニア合成」(研究開発代表者:関根 泰)の支援により実施されました。

<背景>

スウェーデンのスヴァンテ・アレニウスは、1884年に化学反応は高温になるほど速く進むことを明らかにし、アレニウスの法則として高校の教科書にも記載されるほど有名な原理となりました。本研究グループは、外部から固体触媒に電位を印加すると、この法則に反して低温ほど反応が速く進むことを発見し、その原因を探ってきました。

<研究の内容>

化学品や水素運搬体として期待されるアンモニアを、窒素と水素から作る反応はハーバーボッシュ反応として知られ、大規模に工業化されていますが、400度程度の高温と250気圧程度の高圧が必要でした。本研究グループは、半導体性を有する固体触媒に、外部から電位を与えることで、この反応が200度以下の低温でも速やかに進むことを見いだしました。さらに、200度以下の領域では、温度を下げたほうが反応速度が速くなる現象を発見しました。一般的に、反応速度が低温で優勢になるのはアレニウスの法則に従い吸着現象のみでした。しかし反応速度と吸着の相関を検討したところ、触媒表面でイオンが動く際に、吸着が多くなる低温で反応速度が速くなるというメカニズムが明らかになりました。これは化学反応速度がアレニウスの法則に従うという過去の常識を打ち破る、新しい概念です。

温度を自在に制御できる反応装置に、独自の固体触媒を設置し、外部から電場を与えて反応速度を評価し、非アレニウス法則(アレニウスの法則に従わない)型の反応となることを示しました。続いて、赤外スペクトル注)において、透過法と反射法を駆使して、固体触媒表面への吸着量を電場の有無、温度の違いで丁寧に評価し、科学的なモデルを構築しました。最後にモデルによる計算結果と実験結果を照らし合わせたところ、見事に整合することが実証され、非アレニウス法則型の反応がどうして、どのように起こるのかを、吸着と速度の関係から明らかにしました。

<研究の波及効果や社会的影響>

再生可能エネルギー由来の電力を利用し、低温で欲しいときに欲しいだけ化学反応が進められ、さらに温度が低い方が反応速度は上がるという現象は、これまでにない新しい特徴を有しています。欲しいときに欲しいだけ、室温などの低い温度で物質変換が可能になるという、化学反応の世界にパラダイムシフトをもたらすものになります。

このようなメカニズムで反応が進む例はまだ限られているため、再生可能エネルギーを生かして、エネルギーや物質を創り出す多様な反応を、低温で選択的に進められるような材料を探索し、展開を進めていきます。

<参考図>

<用語解説>

注)赤外スペクトル
測定対象となる物質に対して赤外線を照射して、透過した光、あるいは反射してきた光を、波長ごとに分光することでスペクトルを得て、対象となった物の特性を知る方法。

<論文タイトル>

“Key factor for the anti-Arrhenius low-temperature heterogeneous catalysis induced by H+ migration: H+ coverage over support”
著者名:Kota Murakami, Yuta Tanaka, Ryuya Sakai, Yudai Hisai, Sasuga Hayashi, Yuta Mizutani, Takuma Higo, Shuhei Ogo, Jeong Gil Seo, Hideaki Tsuneki, Yasushi Sekine
DOI:10.1039/d0cc00482k

<お問い合わせ先>

(英文)“Key factor for the anti-Arrhenius low-temperature heterogeneous catalysis induced by H+ migration: H+ coverage over support”

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