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<用語解説>

(注1)量子ホール効果:
 2次元電子ガス(注2参照)の運動方向に垂直に強い磁場をかけると電子の軌道運動が量子化され、エネルギーがとびとびの値となるランダウ準位が形成されます。このランダウ準位を磁場の強度で変化させたとき、電子のエネルギーがちょうどランダウ準位のエネルギーと一致するとホール抵抗(注3参照)に平坦部が現れます。ホール効果が量子化されるこの現象を量子ホール効果と呼びます。なお、量子ホール効果には整数量子ホール効果と分数量子ホール効果とがあり、それぞれを明らかにした功績により発見者には1985年と1998年にノーベル物理学賞が贈られました。

(注2)2次元電子ガス:
 半導体と絶縁体あるいは異種半導体どうしの接合界面で界面に沿って運動する電子、すなわち、2次元平面にのみ運動量を持つ希薄な電子のことを2次元電子ガスと呼びます。

(注3)ホール抵抗:
 固体中を流れる電流に垂直に磁場をかけると、電流と磁場の両方に直交する方向に電圧(ホール電圧)が生じる現象をホール効果と呼び、ホール電圧を電流で割った値がホール抵抗です(図2上図参照)。

(注4)移動度:
 移動度は、一定の電界が与えられた固体中を電子が移動する速さを示す物性値であり、1センチメートル当り1ボルトの電界中で1秒間に移動する距離として定義されます。純粋な半導体結晶中では材料固有の値をとりますが、実際の半導体結晶では必ず結晶欠陥が存在し、それらに電子が散乱されるので、固有値よりは小さな値となります。したがって、半導体結晶の品質を高めることで移動度は固有値に近づきます。結晶欠陥が少ない半導体でも電気抵抗を測定するためには、不純物を添加して電子(あるいは正孔)を生成しなければなりません。この不純物によっても電子は散乱されますが、異種半導体どうしの界面で電子が散乱されにくい構造を形成すると移動度は固有値を超えてさらに大きな値となることが知られています(別紙2参照)。

(注5)分極効果:
 コンデンサでは絶縁体の両端に電圧をかけたときだけ電荷が蓄積されますが、絶縁体を強誘電体に置き換えると電圧を切っても蓄積された電荷は失われないため、不揮発性メモリとして動作し実用されています。このとき強誘電体中では相反する電荷を担う原子または分子の位置がわずかにずれており、これを分極した状態にあるといいます。ある種の結晶は電圧をかけなくても特定の結晶方位にわずかに分極した状態にあります。分極の大きさが異なる異種材料を接合するとその差に比例した電荷が界面に蓄積されるようになります。このことを分極効果と呼び、本研究で用いたZnOとMgZnOの接合では、この分極効果を用いて正の電荷を界面に蓄積した結果、電子が界面に引き寄せられて2次元電子ガスが形成されました(別紙2参照)。