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別紙2

<理論説明>

理論説明
 シリコンやGaAsでは、異種半導体どうしの接合界面で2次元電子ガスを形成する方法として、通常「変調ドーピング」という手法がとられます。これは、バンドギャップが大きい半導体層2(たとえばAlGaAs)に微量の不純物(たとえばSi)を添加することでハンドギャップが小さく純粋な半導体層1(GaAs)との界面に電子を導入するものです。この場合、不純物から放出された電子は、不純物とは空間的に離れているため、不純物に散乱されずに運動することができます。負電荷を帯びた電子は正電荷を帯びた不純物から電気的な引力を受けて界面に引き寄せられるので高い移動度を有する2次元電子ガスが形成されます。
 一方、本研究で明らかになった「分極効果」による2次元電子ガス形成機構は、以下のように説明されます。上記と同様にバンドギャップが大小異なる半導体層2(MgZnO)および1(ZnO)の界面に電子が引き寄せられて2次元電子ガスが形成されます。但し、各層は薄膜面内に垂直な方向(緑色の矢印)に分極した状態にあります。各層における分極の大きさが若干異なるため、接合界面は、その差に相当する正電荷(構造や材料を変えれば負電荷にもできます)を帯びます。半導体層1中の電子は、この正電荷によって界面に引き寄せられます。2次元電子ガスの密度は、「分極効果」で生じた正電荷の密度と等しくなるので、分極の大きさを変えれば2次元電子ガスの密度が制御できます。本研究では、MgZnO層(半導体層2)のMg組成を変化させることによって、2次元電子ガスの密度を一桁近く制御することに成功しました。