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<用語解説>

注1)"アクチンフィラメント"の端:
 アクチンフィラメントとは細胞内骨格の一種で、細胞の形状と強度を保ちます。しかしアクチンフィラメントは静止した構造体ではなく、自身が活発に移動します。移動することによって細胞の形状変化や移動、細胞内での物質輸送など広範な細胞活動を担います。たとえば、アクチンフィラメントの移動が起きないと、細胞が移動できず、その結果多細胞生物の体ができません。すべての細胞はある時期に移動して互いの位置関係を調整することで体を作るからです。またガン細胞は異常に移動することによって転移します。
 アクチンフィラメントはアクチンというタンパク質が数珠状に連なってできたフィラメントです。アクチンフィラメント内ではすべてのアクチン分子の方向は揃っているため、アクチンフィラメントには極性(方向性)があり、一端をB端(プラス端)、他端をP端(マイナス端)と呼びます。細胞内では、B端はほとんどいつも伸長し、P端はほとんどいつも短縮しています。

注2)Capping Protein(キャッピング プロテイン):
 Capping Proteinは当初骨格筋組織で、アクチンフィラメントのB端に結合するタンパク質として発見されました。その後、一般の細胞に広く分布しアクチンフィラメントのB端における伸長を調節するタンパク質であることが明らかとなりました。

注3)クライオ電子顕微鏡:
 タンパク質複合体を観察するために開発された電子顕微鏡。タンパク質複合体(試料)を含んだ溶液を薄く展開し液体エタン中で急速凍結することによって試料をごく薄い氷の層に閉じこめたうえ、さらに冷却して液体ヘリウム温度におき電子顕微鏡で観察します。試料を染色固定する方法に比して、この方法には2つの利点があります。第一に、低温で電子線を照射するためタンパク質試料の電子線による損傷が軽減されます。第二に、タンパク質試料を生理的(自然な)な溶液条件で観察することができます。