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<用語解説>

(注1)微小管ネットワーク:
 微小管はアクチンと同様に宿主細胞の形態を維持するために重要な働きをしているフィラメント状の構造物です。微小管はα-チューブリンとβ-チューブリンが1:1で結合したもの(ヘテロ2両体)が重合したものです。細胞質内には微小管ネットワークが網目状に張り巡らされており、これに沿って物質の移動が行われています。

(注2)アクチン重合:
 アクチンには単量体であるG-アクチンと複数のG-アクチンが重合したF-アクチンとがあります。宿主細胞内ではF-アクチンが繊維状に重合した構造物(アクチンフィラメント)が細胞の背骨の役割を果たし、細胞の形態維持に重要な役割を担っています。赤痢菌は菌体表面の一極に発現されたVirGタンパク質により菌体の一極でF-アクチンの重合を促進し、菌体の後部にアクチン凝集束を形成することによって菌体を前に押し出すことで運動の推進力を作り出すことが知られています。その様子は彗星が尾を引いて動いているように見えることから、アクチン凝集束を「アクチンコメット」と呼ぶこともあります。

(注3)VirAタンパク質:
 赤痢菌が持つ針状のIII型分泌機構から菌体外へ分泌される病原タンパク質です。赤痢菌は上皮細胞にIII型分泌機構を突き刺し、直接細胞内へ各種病原因子を送り込み、赤痢菌が付着した部位の周辺で細胞の形態を立体的に変化させること(ラッフル誘導)により細胞内に侵入することが知られていますが、VirAタンパク質は上皮細胞にラッフル形成を誘導する赤痢菌の病原因子の一つとして考えられています。

(注4)リステリア属菌:
 リステリア属に属する8種の菌のこと。このうち、リステリア・モノサイトゲネスにはヒトに対する病原性があり、医学分野では特にこの菌種のことを指します。リステリア・モノサイトゲネスは、宿主細胞内でも細胞外でも増殖することが可能です。赤痢菌と同様に細胞骨格を構成するアクチンを利用して細胞質内を移動し、さらに隣接する細胞へ侵入するという特徴をもちます。

(注5)リケッチア:
 リケッチア属の菌の総称。シラミ、ダニ、ツツガムシ等の節足動物を媒介として、ヒトに紅斑熱、発疹チフス、ツツガムシ病など各種リケッチア症を引き起こします。宿主細胞内で増殖し、細胞外へ出すと急激に死滅します。

(注6)VirGタンパク質:
 赤痢菌の菌体表面の片方の端に存在する病原タンパク質であり、アクチンを再構成しアクチン凝集束を形成させる働きを持ちます。赤痢菌はアクチン凝集束を足場として移動することから、細胞内における赤痢菌の運動性に必須なタンパク質です。