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2022/3/29

新目標のプロジェクトマネージャーが決定しました。

ムーンショット型研究開発事業 ムーンショット目標8・9 プロジェクトマネージャー(PM)採択者一覧

※提案者の所属・氏名・研究開発プロジェクト名は応募時点のものです。研究開発プロジェクト名は、採択後の作り込み(提案した研究開発プロジェクトの見直しおよび具体化)を経て変更される場合があります。

ムーンショット目標8:2050年までに、激甚化しつつある台風や豪雨を制御し極端風水害の脅威から解放された安全安心な社会を実現
【コア研究】
プロジェクトマネージャー(PM) 研究開発プロジェクト名
澤田 洋平(東京大学 大学院工学系研究科 准教授) 社会的意思決定を支援する気象-社会結合系の制御理論
筆保 弘徳(横浜国立大学 先端科学高等研究院 台風科学技術研究センター長) 安全で豊かな社会を目指す台風制御研究
山口 弘誠(京都大学 防災研究所 准教授) ゲリラ豪雨・線状対流系豪雨と共に生きる気象制御
【要素研究】
プロジェクトマネージャー(PM) 研究開発プロジェクト名
小槻 峻司(千葉大学 環境リモートセンシング研究センター 准教授) 気象制御のための制御容易性・被害低減効果の定量化
高垣 直尚(兵庫県立大学 大学院工学研究科 准教授) 台風下の海表面での運動量・熱流束の予測と制御
西澤 誠也(理化学研究所 計算科学研究センター 研究員) 局地的気象現象の蓋然性の推定を可能にする気象モデルの開発
野々村 拓(東北大学 大学院工学研究科 准教授) 大規模自由度場のセンサ/アクチュエータ位置最適化と非直交・非線形最適制御則の構築
森 修一(海洋研究開発機構 地球環境部門 プログラム長代理(上席研究員)) 台風制御の予測と監視に不可欠な海の無人機開発
<総評> PD:三好 建正(理化学研究所 計算科学研究センター チームリーダー)

 本ムーンショット目標は、2050年までに、激甚化しつつある台風や豪雨の強度・タイミング・発生範囲などを変化させる制御によって極端風水害による被害を大幅に軽減し、我が国及び国際社会に幅広く便益を得ることを目指すものとして、2021年に策定されました。本目標達成に向けたプロジェクトマネージャー(PM)及び研究開発プロジェクトの募集にあたっては、多様かつ挑戦的な研究開発のアイデアを取り入れながら研究開発を推進することが特に重要であることから、2050年の社会像からバックキャストし全体シナリオを描いた上で進める「コア研究」に加えて、気象制御におけるボトルネックの解決に向けて新奇なアイデアで取り組む「要素研究」の、2つのタイプで公募を行いました。

 その結果、28名(うちコア研究9名、要素研究19名)からの応募がありました。その後、気象学・制御工学・土木工学・水文学・数理科学・防災学・社会科学等の幅広い分野にわたる、25名の外部専門家の方々にご協力いただき、PDを補佐する2名のサブPDとともに、厳正かつ公正な選考を行いました。面接選考においては19名(うちコア研究7名、要素研究12名)の面接を実施し、最終的に8名(うちコア研究3名、要素研究5名)のPM及び研究開発プロジェクトを採択しました。

 採択されたPMは、サブPDやアドバイザー等の協力を得たPDの指揮の下、応募時に提案した研究開発プロジェクトの作り込み(見直し及び具体化等:ムーンショット目標達成に至るシナリオの見直し、研究開発プロジェクトの詳細計画の立案及び代表機関によるPM 活動に対する支援体制の構築等)を進めていくことになります。

 今回の選考においては、特に「気象制御という目標達成に資するか」という観点を重視しました。具体的には、以下の通りです。

  • コア研究においては、2050年の気象制御達成からバックキャストした実現シナリオが適切に提案されており、それに基づく主要なボトルネックが提示されているか、そのボトルネック解決を主要な課題と捉えた研究開発を設定しているか、気象制御全体に取り組む計画となっているか、等
  • 要素研究においては、将来の気象制御達成に向けた重要なボトルネックが提示されているか(または見込まれるか)、その解決に向けて挑戦的な研究開発を行うものであるか、等

 採択された提案は、2050年までに気象制御を実施する上での様々なボトルネックの解決に多様な角度から挑戦するものであり、いずれも実現に向けた具体的な検討がなされた優れた提案でした。残念ながら採択に至らなかった提案の中にも、気象予測の高速化や新奇な制御手法のアイデアなど、学術的に優れた提案が数多くありました。しかしながら、ボトルネック解決に向けた重要度や科学技術的な挑戦性、実現可能性などの観点から総合的に評価した結果、採択に至りませんでした。

 今回採択された提案の全体像としては、気象学的アプローチを扱う内容は比較的充実している一方、多様な挑戦が必要な制御手法に係る研究開発や、気象制御のボトルネックの事前設定が必要なELSI研究・数理研究については不足しています。また、本目標は全く新しい挑戦であることから、現状では顕在化していない課題も多く存在すると考えています。今後も、気象制御に必要な研究開発要素の抽出を引き続き行うとともに、解決が必要な分野や課題を明示した上での追加公募を行うなど、目標達成に向けた取り組みを柔軟に行っていきます。

 また、従前の学術領域を超える概念と連携が必要となるため、積極的な情報発信やワークショップ等を通して、気象制御に向けた要検討課題に係る情報共有やオープンな議論を行い、本分野への理解と異分野からの新規参入を促進します。

 加えて、市民の皆様とともに「あるべき気象制御」を議論し、理解することが必要です。倫理的・法的・社会的課題(ELSI)について、もちろん研究開発でも取り組みますが、これらに加えて公開シンポジウム等を通して可能な限りオープンサイエンスで推進し、そこで得た知見を研究開発にフィードバックするなど、双方向の研究開発を推進します。

ムーンショット目標9:2050年までに、こころの安らぎや活力を増大することで、精神的に豊かで躍動的な社会を実現
【コア研究】
プロジェクトマネージャー(PM) 研究開発プロジェクト名
今水 寛(株式会社国際電気通信基礎技術研究所 脳情報通信総合研究所 所長) 仏教・機械・脳科学で実現する安らぎと慈しみの境地
筒井 健一郎(東北大学 大学院生命科学研究科 教授) 多様なこころを脳と身体性機能に基づいてつなぐ「自在ホンヤク機」の開発
橋田 浩一(理化学研究所 革新知能統合研究センター グループディレクター) データの分散管理によるこころの自由と価値の共創
松元 健二(玉川大学 脳科学研究所 教授) 脳指標の個人間比較に基づく福祉と主体性の最大化
山田 真希子(量子科学技術研究開発機構 量子医科学研究所/量子生命科学研究所 グループリーダー) 逆境の中でも前向きに生きられる社会の実現
山脇 成人(広島大学 脳・こころ・感性科学研究センター 特任教授) Awareness Musicによる「こころの資本」イノベーション
【要素研究】
プロジェクトマネージャー(PM) 研究開発プロジェクト名
菊知 充(金沢大学 医薬保健研究域医学系 教授) 子どもの好奇心・個性を守り、躍動的な社会を実現する
喜田 聡(東京大学 大学院農学生命科学研究科 教授) 食の心理メカニズムを司る食嗜好性変容制御基盤の解明
内匠 透(神戸大学 大学院医学研究科 教授) こころの可視化と操作を可能にする脳科学的基盤開発
友田 明美(福井大学 子どものこころの発達研究センター センター長/教授) 被虐待児、虐待加害、世代間連鎖ゼロ化社会
中村 亨(大阪大学 大学院基礎工学研究科 特任教授(常勤)) AIoTによる普遍的感情状態空間の構築とこころの好不調検知技術の開発
細田 千尋(帝京大学 先端総合研究機構 講師) 「私たちの子育て」を実現する代替親族制のための情報社会基盤の開発
宮崎 勝彦(沖縄科学技術大学院大学 神経計算ユニット シニアスタッフサイエンティスト) 楽観と悲観をめぐるセロトニン機序解明
<総評> PD:熊谷 誠慈(京都大学 こころの未来研究センター 准教授)

 本ムーンショット目標は、2050年までに、こころの安らぎや活力を増大することで精神的に豊かで躍動的な社会の実現を目指すものとして、目標8と同様、2021年に策定されました。内容としては、多元的な構造で捉えづらい「こころ」を対象として、個人・社会・世界における人間の幸せに寄与するような、様々な英知を集めて異なる分野間の連携(“総合知”)にて挑戦的な研究開発の取り組みを実施しようとするものです。この取り組み自体が挑戦的であることもあり、2050年の社会像からバックキャストして全体シナリオを描いた上で進める研究プロジェクトである「コア研究」に加え、全体構想を描くことが困難であるものの将来的に「コア研究」の一部となる可能性を持つ新奇性が高い研究を「要素研究」として設定し、その2つのタイプで公募を行いました。

 その結果、71名(うちコア研究33名、要素研究38名)からの応募がありました。選考に当たっては、心理学、認知科学、社会学、情報科学、医学、脳・神経科学等といった幅広い分野から17名の外部専門家の方々の協力を得て、PDを補佐する3名のサブPDとともに厳正かつ公平に選考を進めました。書類選考では25名(うちコア研究13名、要素研究12名)の面接選考課題を選定し、面接選考では13名(うちコア研究6名、要素研究7名)のPM及び研究開発プロジェクトを採択しました。

 採択されたPMは、サブPDやアドバイザー等の協力を得たPDの指揮の下、応募時に提案した研究開発プロジェクトの作り込み(見直し及び具体化等:ムーンショット目標達成に至るシナリオの見直し、研究開発プロジェクトの詳細計画の立案及び代表機関によるPM 活動に対する支援体制の構築等)を進めていくことになります。今後、コア研究は、目標達成に必要と考えられる研究開発要素として「(ア)こころの機序解明」、「(イ)こころの状態遷移」、「(ウ)社会実装」等を総合的に含んだプロジェクト構成として開始し、随時、外部からの人材の参画を得ながらより本格的な研究に発展することを期待しています。要素研究は、研究開発期間後にはその成果をもって他のコア研究グループに参画し目標達成に寄与する、あるいは他の要素研究等との統合により新しいコア研究グループを組成し目標達成を目指す等、研究開発がより高次のレベルに発展していくことを期待しています。これらを実現するためにも、各プロジェクトには本目標内外の人材との活発な交流や共創を行っていただけるよう、目標全体としても取り組みたいと考えています。

 今回の選考においては、こころに対する研究として、ムーンショットならではの挑戦性や実現可能性等とともに、目標内外の他のプロジェクトとのシナジー効果を生みうる可能性についても着目しました。採択されたプロジェクトは、子どもと大人の関係、個人、集団、社会といった様々なスケールでのこころに対して、その安らぎや活力の増大に繋がりうるものとして、多様な角度から挑戦するものであり、いずれも実現に向けた具体的な検討がなされた優れた提案でした。残念ながら採択に至らなかった提案の中にも、例えば、分子生物学から人文社会科学までを視野に入れた壮大なウェルビーイング研究等の意欲的な提案が数多くありました。しかしながら、本ムーンショット目標を達成するにあたっての提案内容の挑戦性、科学技術的な実現可能性や、将来の産業・社会への波及効果の見通しなどについて説明が不十分と考えられる提案については、総合的な評価の結果、残念ながら採択に至りませんでした。

 採択されたプロジェクトの構成としては、実施内容について多様性かつ独自性を有する内容がある程度揃ったと考えています。しかしながら、目標達成に必要だと考える人文社会科学と自然科学との深い異分野連携やこころと深く結びつく要素(文化・伝統・芸術等を含む。)との大胆な連携を目標全体として更に強化する必要があると考えます。今後、目標達成に向けた研究開発要素を補強すべく、既存技術の延長線上にない大幅な技術革新が期待される提案を追加で公募することも検討したいと考えています。

 加えて、特にこころを対象とした挑戦的研究では、将来を見据えた倫理的・法的・社会的課題(ELSI)について、多様な参画者・視点での議論が必要です。また、一般市民が研究開発の現状や方向性を十分に理解できるよう情報を公開しつつ、対話を伴った研究開発の実施について、各プロジェクトのみならず目標全体としても取り組んでいきたいと考えています。プロジェクトとの双方向の議論・対話を進めていくためにも、多くの方々にご関心を持っていただけることを期待しています。