低炭素社会の実現に向けた技術および経済・社会の定量的シナリオに基づくイノベーション政策立案のための提案書

LCS-FY2022-PP-01

用途別日本のセメント需要予測および建材起源のCO2排出量の予測

  • SDGs7
  • SDGs9
  • SDGs13

概要

 資源エネルギー庁総合エネルギー統計によれば、2020年のセメント業のエネルギー起源CO2排出量は日本全体の約1.2%程度であるが[1]、原材料起源のCO2排出を含むと約3%に増えるとされる。また建設・建築業ではこれに代わる有力な材料も見当たらない。このため日本の炭素中立化の実現には、セメント部門からの排出をDAC/CCS か、CO2吹込みによる固定化技術開発を土木工事一般に広げるか、セメントに代わる素材を開発するか、いずれかの手段が必要であるが、現時点ではいずれも高価である。これらの技術の導入規模と費用およびその社会的負荷を評価するためには、まず将来のセメント需要を詳細に見ることが重要となる。

 セメントの需要先である社会資本は、ストックがサービスを提供し、その更新や拡大がセメントなど建材用途の新規需要を生む。そのためストック需要の将来推計から行う必要がある。
 本提案書では、まず主要な需要先である住宅、非住宅建物、土木建設について社会資本将来ストックを推計する。ついで、これら施設の耐用寿命から用途別新規投資需要を推計し、さらにこの新規建設に必要な建材需要の予測を行う。
 この推計の結果、2030年まではセメント需要の微増傾向は続くものの、それ以降2050年にかけては人口減少による新築需要減少が顕在化し、建物需要起源のセメント需要は2018年実績値の42%にまで低下した。一方、インフラ建設の補修・更新需要は80%程度にしか低下しないため、全体としては62%程度までの低下にとどまることになった。これは、対策オプションの限られるセメント製造部門の2050年の炭素中立化の実現に対する大きな課題となるので、DAC/CCSの導入または炭素中立的な建材あるいは工法の開発が急がれることが結論とされる。

提案書全文

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