低炭素社会の実現に向けた技術および経済・社会の定量的シナリオに基づくイノベーション政策立案のための提案書

LCS-FY2019-PP-11

電力システムの調整力としてのSOFCの利用可能性についての分析

  • SDGs7
  • SDGs9
  • SDGs11
  • SDGs13

概要

 本提案書では、調整力の不足が深刻な課題となっている状況に鑑み、燃料電池、特にSOFCによる調整力提供の可能性を分析した。本分析のために、まず、九州電力管内の全ての発電所を含み、太陽光発電の出力予測誤差を考慮した確率的起動停止計画モデルを開発した。

 この確率的起動停止計画モデルを用い、需給調整における調整力価格を推定した。次に、SOFCを搭載した一般家庭のエネルギーコスト最小化のモデルを開発し、実際の需要データに対するSOFCの最適運転パターンを導出した。そして、確率的起動停止計画モデルで推定した調整力の上げ代価格をSOFC搭載家庭モデルに代入し、上げ代調整力提供の報酬がある場合とない場合の最適運転パターンの相違を明らかにした。その結果、特に調整力報酬があることで、SOFCの最適運転パターンが変化し、上げ代を提供できることが分かった。本分析の結果より、SOFCによる調整力提供は有望であり、近い将来に実現する可能性がある。
 政策面への提案としては、行政が主導して、本提案書での解析結果に関する実証実験を行うことが挙げられる。例えば、太陽光発電(PV)の予測誤差に基づくインバランスを補償するシステムを考える場合、実地域の気象データとPVの予測、実測データを元にして、遠隔操作可能なSOFCとの組み合わせによる実証実験を行う必要がある。これにより、その後他地域で収益性のあるビジネスモデルをいかにして確立できるかが明らかとなり、脱炭素社会に向けたイノベーション活性化につながることが期待できる。

提案書全文

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