低炭素社会の実現に向けた技術および経済・社会の定量的シナリオに基づくイノベーション政策立案のための提案書

LCS-FY2016-PP-20

シナリオプランニングを活用した2050年の明るく豊かな低炭素社会試案

概要

 2015年末に採択されたパリ協定は、日本も批准し、発効している。また、気候変動による影響は水害の増加などによって顕在化しており、気候変動の影響や対策によって、社会・経済が大きく影響を受ける時代が到来している。
 そのような「先の見えない」時代において、過去のトレンドから将来を「予測」、「見通す」ことはより困難である。一方、バックキャスティングは望ましい将来を描くものの、影響が大きい変化が起きたときの対応力を高めるには適当ではない。

 低炭素社会戦略センター(LCS)では、2016年11月にシナリオプランニングを実施した。その結果の中から、通常の方法では考えられない二つのシナリオ分岐を得ることができた。
 一つは、「バーチャルユートピア」シナリオであり、高度な技術が活用され、多くの労働はロボットによって代替され、在宅中心に“創造的”仕事をする人がほとんどとなる。人々は芸術やスポーツ、ゲームに興じる時間を多く持つことが可能となっている。大量生産大量リサイクルによって循環社会が実現している。人工授精の技術によって、高齢でも出産できるようになり、出生率は回復し、人口はゆるやかな増加に転じている。電力は世界全体での広域運用となり、再エネも大量導入し、自動車は電気自動車となる。
 もう一つは、「ローカルフロンティア」シナリオであり、より手作りやスローライフが評価され、手間をかけることこそが贅沢という社会となる。自らの畑を持ち、みそや醤油も手作りをし、リユースやシェアも増え、廃棄物発生量が減少する。エネルギーはマイクログリッドによって運用されている。人と人とが会って一緒に作業することが多くなることから、出生率は自然回復する。
 この二つのシナリオをベースに、定量分析を実施したところ、低炭素化は両者において同程度実現するが、その社会像は全く異なるという結果となった。
 今後は、試行的に実施した今回のシナリオプランニングと定量分析について、より深めたシナリオ構築を実施してゆきたい。また、不確実性の高いこれからの未来を語る上では、従来の予測や見通しだけではなく、市民や行政・企業を含めたブレーンストーミングとして、シナリオプランニングの実施の検討を進める。

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