低炭素社会の実現に向けた技術および経済・社会の定量的シナリオに基づくイノベーション政策立案のための提案書

LCS-FY2016-PP-04

地熱発電(Vol.3)
—高温岩体発電の水圧破砕エネルギーと開発可能な発電出力—

概要

 高温岩体発電では人工貯留層を造成するために水圧破砕が行われるが、近隣地域への影響が大きい誘発地震の抑制が課題のひとつである。注入する水の圧力、流量、時間で計算される注入エネルギーを、岩体に亀裂を生じさせるエネルギーと生じた亀裂に水を浸入させるエネルギーに分けると、前者は誘発地震、後者は貯留層造成に対応する。

 過去に行われた6サイト(雄勝、肘折、Soultz、Cooper Basin、Basel、Newberry)での水圧破砕のデータを基に、注入エネルギー、誘発地震で解放されるエネルギーおよび造成される貯留層の体積の関係を調査した。その結果、造成される貯留層体積は、注入エネルギーではなく貯留層造成エネルギーに比例することが確認できた。水圧破砕の実施中に貯留層体積を計算できれば、誘発地震のマグニチュードを推定できる。
 地熱資源が豊富と言われる日本で開発可能な高温岩体の発電出力を、地質調査総合センター(2009)全国地熱ポテンシャルマップCD-ROM版に示された地温勾配100℃以上/1,000mの地域について試算した。河川から取水した水を人工貯留層に注入し、地上設備をシングルフラッシュ式とし、30年間稼動する場合、全国で約22GWが開発可能であることが分かった。温泉発電は約1GW、熱水系地熱発電は14GWが開発可能と推定されており、高温岩体発電と合わせると37GW(電力需要の約25%に相当)となる。

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