低炭素社会の実現に向けた技術および経済・社会の定量的シナリオに基づくイノベーション政策立案のための提案書

LCS-FY2015-PP-14

持続可能な社会に向けた施策の有効性判断に資する指標評価の構築

概要

 低炭素社会を実現させていくには、低炭素技術の普及とそれに伴う経済社会の豊かさ、あるいは、その達成度合を測ることも重要である。文献[1]では、社会的な要因(寿命と不平等)に加え、環境汚染や気候変動問題を考慮した社会厚生評価を行った。

 この評価手法は、最近開発された社会厚生評価モデルに大気汚染や気候変動に関する定量化された値を加えたもので、従来の所得概念で評価した社会厚生では捉えきれない環境負荷による影響を含めることができる。本稿では、環境汚染や気候変動による人々の効用変化を考慮した社会厚生の評価手法を概観し、厚生評価の結果を示す。分析の結果、環境を含めた社会厚生は、所得に代えて社会厚生を評価しても、従来の厚生概念を歪めることなく利用することができると考えられる。さらに、所得が低い国の中には環境を考慮した社会厚生が相対的に高く評価される国がある一方、所得が高い国の中にはこれら環境要因を考慮した社会厚生が相対的に低く評価される国があることが分かった。このことから、各国の状況に応じた経済開発や支援によって効率的に社会厚生を高めることができると考えられる。具体的には、所得が低い国に対して低炭素技術の普及・利用と経済成長が同時に達成できる経済開発への資金支援スキームの活用が期待される一方、所得水準は高いものの、環境を考慮した社会厚生が相対的に低い国に対しては、相対的に所得が高いことから市場取引を通じた低炭素技術の普及が可能であろう。そのためには、特許制度の整備を進めていくことが重要である。

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