低炭素社会の実現に向けた技術および経済・社会の定量的シナリオに基づくイノベーション政策立案のための提案書

LCS-FY2013-PP-08

家庭の省エネ促進と省エネ価値市場の創成のための政策パッケージデザイン~
「電気代そのまま払い」の実現とグリーンパワーモデレータ(GPM)の創出

概要

 本提案書では、日本の家庭部門において、大幅に省エネルギー(家庭に設置する再エネも含む)を進めるための枠組みと政策を提案する。特に、既築住宅を対象に、省エネ・再エネ機器や断熱改修を所得や貯蓄の多寡に関わらず気軽に行うことができる仕組みをデザインする。

 また、省エネルギーの価値や、再エネ大量導入によるLFC(Load Frequency Control、負荷周波数制御)制約緩和の価値、さらには自由化時代の停電リスク低減の価値を市場で顕在化させる仕組みを政策的に実現させる。それによって、従来補助金主導になりがちであった低炭素対策普及政策を超えて、自律的に動く市場を創出する。
 具体的には、初期投資ゼロ、月々の負担ゼロにて家庭が低炭素化対策を導入する仕組みとして、「電気代そのまま払い」を実現する。同様の仕組みとして英国で2013年1月にスタートしているグリーンディール(GD)を参考に、より日本の家庭事情や政策動向を反映した実現プランを提案する。
 「電気代そのまま払い」が大幅に普及するために、各種手続きをワンストップで代行する事業者が必要である。その事業者を、「グリーンパワーモデレーター(GPM)」と仮称し、その事業が成立するための社会制度を提案する。
 具体的には、2016年頃実現することになっている家庭部門の電力小売り自由化に合わせて、電力だけでなく、省エネ価値の取引(ネガワットアグリゲート事業)が行えるよう、その価値が評価される枠組みの整備が必要である。ネガワットアグリゲート事業には、再エネ大量導入時代のLFC制約緩和や、自由化時代の停電リスクを低減することによる収益も想定しており、LFC制約緩和や停電リスク低減の価値が評価される枠組みの整備も必要である。
 また、GPMの事業である「電気代そのまま払い」やネガワットアグリゲート事業を、1件あたりのコストを低く抑えるためにも、家庭へのHEMSの普及と、HEMS(Home Energy Management System)を通じた情報解析・家電等の制御を、ネットワーク全体にとって最適になるように行うシステムの開発が必須となってくる。
 以上の提案が実現されると、家庭にとっては、家に居ながらにして、ネットワークを通じた省エネ診断を依頼することができ(または自動的に診断が行われ)、初期コストゼロ、月々の支払い増ゼロ(節電分によってローン返済を行うため)で家庭の省エネ対策を行うことができる。また、省エネルギーが社会にもたらす価値が顕在化し、それを扱う事業者のノウハウが蓄積することで、日本企業が日本や世界の省エネルギーに寄与しつつ、そのサービスの対価を得る事業が創出される。

提案書全文

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