低炭素社会の実現に向けた技術および経済・社会の定量的シナリオに基づくイノベーション政策立案のための提案書

LCS-FY2014-PP-09

林業の活性化を通じた地域における低炭素社会の実現
—木材チップ等の製造コスト検討—

概要

 国土の約66%が森林を占める我が国において、木質バイオマスは豊富かつ地域的偏在の少ないカーボンニュートラルなエネルギー資源として、高いポテンシャルを有している。また近年の原油価格の高止まり傾向や再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度をはじめとした政策的な後押しもあり、燃料用木材チップや木質ペレットなどの木質バイオマスのエネルギーとしての需要が増加している。

 しかし、製材工場廃材や建築廃材等の木質廃棄物を原料とする燃料用木材チップや木質ペレットは既にその大半がエネルギー利用されており、原料が不足している。一方、それらよりも賦存量が多い林地残材は、そのほとんどが経済合理性の問題から利用されておらず、その活用に向けたシステム作りが大きな課題になっている。LCSでは、木質バイオマスが豊富にある農山村地域を対象に林業を活性化させ、その資源を十分に活用するため、森林の造林からエネルギー利用まで一貫した経済合理性のある自律分散型の木質バイオマスのエネルギー利用プロセス設計を行っている。本提案書では、木質ペレット及び木材チップのコスト構造について検証を行った。本分析地における木材チップの製造にかかる単位熱量当たりのコストは1.6円/MJであった。この値は、木質ペレット(1.9~2.5円/MJ)や、化石燃料(1.9~2.8円/MJ)と比較して、ほぼ同等から半分程度であった。但し、本検証に用いた木質原料費には補助金によるコスト低減効果が含まれており、更に将来的な国際競争までを考慮すると、単位熱量当たりの製造コストは現在の半分から最大で5分の1程度まで下げる必要がある。木質バイオマスの更なる利用拡大に向けて、原料収集コストや製造コストの大幅低減が必須である。加えて木質バイオマス利用機器等の初期コスト低減や、木材チップ固有の課題として含水率低減による発熱量の増加が必要である。

提案書全文

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