低炭素社会の実現に向けた技術および経済・社会の定量的シナリオに基づくイノベーション政策立案のための提案書

LCS-FY2013-PP-06

中小水力発電
—要素技術の構造化に基づく定量的技術シナリオと科学・技術ロードマップ—(着手段階)

概要

 我が国における中小水力発電は大きな再生可能エネルギー源であるが、現状では建設費としての初期コストが高く、普及の妨げになっている。日本の中小水力発電の未開発賦存量は約1,000万kWとされており、ひとつひとつは小規模であるが、全国に約2万地点分散している。一例として100~300kW程度の規模が見込める候補地点について試算したところ、現状の発電原価は補助金等がない場合、35円/kWh以上であり、市況のエネルギー単価に近づけるためには建設費を1/3程度にコストダウンする必要のあることが分かった。

 コストダウンの可能性を検討するため、電気関係工事費の大半を占める水車と発電機の原材料費率の逆数をシステム付加価値と定義し、使用する材料に付加する加工費の割合を調査、計算した。水車および発電機合計のシステム付加価値は1,000kW以下の範囲では発電規模によらず20程度であり、原材料費に比べ加工費偏重のコスト構造であることが分かった。現状では水車、発電機とも地点特有の流量や落差に合わせた個別の設計、製造を行っており、かつ年間の生産量が20台程度と低く、標準化や量産化が進みにくいためと思われる。
 水力発電技術はほぼ成熟しており、新技術等による大幅なコストダウンは難しいが、量産によるコストダウンの可能性を検討した。その結果、全国約2万地点に分散する候補地点に標準化された複数台の水車および発電機を使うことで、現在の100倍以上の需要が見込め、水車および発電機のコストを1/3程度にできる可能性のあることが分かった。
 今後、発電原価を決める他の要因である土木工事費、各河川の流況の影響、年間経費率などについても調査し、各河川の流況に適した賦存量、発電原価の算出法を確立し、全国への普及促進方法を提案する。

提案書全文

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